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異色経営者に聞く 赤字リゾートを再生させた仕組みと発想

9/15(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 長野県富士見町の八ケ岳中腹に位置する富士見高原リゾート株式会社は、スキー場、花の里、ゴルフ場、ホテル、大型合宿施設、約2000区画の別荘地管理からなる複合施設だ。町の公社や地元の財産区が出資した第三セクターとして、1972年にスタートした。

 バブル期には施設利用者が伸び、95年には来場者61万人、売上高24億円、純利益1億5000万円を記録した。だが多くのリゾートと同様にバブル崩壊後、経営難にあえぐ。来場者と売上高は半減し、2000年代は毎年のように赤字を計上した。

 11年にこの会社は現社長の福田敏明氏(70)を外部から招聘した。福田氏の前職は山梨県韮崎市副市長だが、もともと公務員ではない。

 福田氏は中央大学卒業後、マイカル(当時ニチイ)に入社。スーパー、ファッションビル、百貨店を経験した後、1992年に開業した同社子会社のリゾートホテル「リゾナーレ小淵沢」の社長を務めた。こちらは高級リゾートとして高い評価を受けたが、01年のマイカル破綻を受け、他社に営業譲渡された。その後、経験を買われ韮崎市副市長にスカウトされた。

 官民両方を経験した福田氏は自治体に移った時にギャップを感じたという。

「民間は変わること、変えることが当たり前。だが変わらないことが美徳なのが公務員の文化です。公務員には優秀な人も多いが、クオリティーや効率化や時代の流れを考える空気がなかった。今の会社にも同じような空気を感じました」(福田氏)

 福田氏が富士見高原リゾートの社長になって取り組んだのは、「仕組み」を変えること。「小さい会社なのに部門ごとに縦割りでシナジー効果が薄い。また高齢化によるゴルフ・スキー客の減少に対応できず、集客減と高コスト体質になっていた」という。

 組織の風通しを良くし、食材・資材などの仕入れも固定の業者の言い値から、競争の仕組みを導入した。品質向上とコスト削減は同時に可能なこともあるという。

 集客面では新たなアトラクションをつくった。同リゾートの山頂にある「創造の森」という展望公園に向けて往復ができる自動運転カートを導入した。

「物事は一面から見るだけではなく、横からも裏からも見れば違う側面が見えてくる。私はこれを『六面体の発想』と呼んでいます。何も生まないように見えるものでも発想を変えればまた違うビジネスになる。これもゴルフ場の余ったカートと大自然の2つを有効活用できないかという発想から生まれたもの」という。秋にはこのカートからの「ゴールデンカーペット」と呼ばれる、八ケ岳からの落差2000メートルに及ぶ紅葉の大展望が人気となっている。

 障害者やお年寄りも自然を楽しめる「ユニバーサルフィールド」化にも力を入れている。車椅子の人でもスキーを楽しめる日本初の「デュアルスキー」を導入した。

 福田氏はこの姿勢で他のリゾート施設が見逃してきた新たな客層を掘り起こした。同社は集客を約2割伸ばし、年平均約3500万円の経常黒字を計上。赤字リゾート施設が「仕組み」と「発想」で蘇った。

(取材・文 中村知空)