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劇場版「フリクリ オルタナ」 すごいことなんかない、当たり前のことすらこなせない続編

9/15(土) 19:00配信

ねとらぼ

 GAINAXの諸作品を手掛けた鶴巻和哉、「少女革命ウテナ」の榎戸洋司らが20世紀の終わりに放った唯一無二のOVAシリーズ「フリクリ」。難解なストーリー、魅力的なキャラクター、実験的かつビビッドなアニメーション、the pillowsの楽曲をふんだんに使用した劇伴。どこを切り取っても斬新の一言である同作は今もなお国内のみならず、海外でもカルト的な人気作である。

【画像】ハル子のラップシーン

 その17年ぶりの続編「フリクリ オルタナ」(以下、「オルタナ」)。原作権がProduction I.Gに譲渡された上、スーパーバイザーである鶴巻とキャラクター原案の貞本義行を除き、オリジナルメンバーとは全く異なる制作陣によって作られることになったその出来に懐疑的だったファンは少なくない。だがあらかじめ下げておいたハードルの全てをここまで下回ると、誰が予想できただろうか。
 
【以下、「フリクリ」「フリクリ オルタナ」のネタバレを含みます】
 

実験も快楽もないアニメーション表現

 「フリクリ」作中でも何度か言及される通り、「フリクリってそもそも何?」とはよく問われる問題だ。

 それは主人公・ナオ太が生きる思春期の鬱屈した日々とリビドーを象徴する閉じた街を舞台に、日常を破壊する自由人・ハル子が暴れまわるコミカルなギャップものであり、多彩なアニメーターたちがその手腕を満遍なく振るい切ったアニメーション表現の見本市であり、一見ムチャクチャなアドリブで破天荒そのままに進行していくように見えるシナリオが実は緻密に組み上げられたものであったり、そのままでも存分にカッコいいthe pillowsの楽曲をフルに活用したMusic Videoでもあったりする。

 フリクリのどこがカッコいい、ここが好き、という点は人によってもちろん異なるだろう。とにかく「フリクリ」には、次はこれをやってやろう、驚かせてやろうというアイデアがここぞとばかりに詰め込まれていた。

 突然変貌する絵柄、コミック調・切り絵になるコメディー表現、「マトリックス」を模したバレットタイムなど、目を引く演出が各話に必ず1つは存在する。だから「わけが分からなかったけれど面白かった」という感想に対して、若干残念な気持ちはあるものの、そんな受け止め方も理解できる作品だ。

 「オルタナ」にはそれが何1つ見られなかった。カット割りは引き絵とクローズアップを繰り返すだけの単調なもので、予告編にも含まれるバレットタイム、矢継ぎ早に繰り広げられる会話が画面を分割していくシーン、(まだ見られるほうの)アクションといった「フリクリ」の表現を劣化させたそれですら2話以降、ほぼ完全に姿を消す。

 同作は20数分程度のアニメーション全6話が順次放映される、いわゆるアニメ一挙上映に近いスタイルをとっており、「フリクリ」同様各話の絵コンテ・演出者は異なる。にもかかわらず各話に突出した差異すら見受けられず、どれも平凡なアニメーションにしか見えない。

 上映期間の短さから、同作品のターゲットがフリクリを視聴済みの人間であろうことは想像に難くない。ゆえに訪れた観客はまずここで、フリクリをまずそれ足らしめていた視覚的な快楽が全く存在しないことに困惑することになる。

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最終更新:9/17(月) 19:23
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