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<瀬戸内海>養殖ノリ、窒素増やして色鮮やか 下水改善計画

9/15(土) 13:35配信

毎日新聞

 兵庫県は、全国第2位の生産量を誇る養殖ノリの「色落ち」被害対策として、下水処理水の窒素濃度を上げて瀬戸内海に流し、海水の栄養度を高める事業計画を14日策定し、本格化させる。窒素はノリの成長に必要な栄養素。今後約10年で播磨灘沿岸で現在の7割増となる24カ所(試行含む)の処理場で実施する計画で、人の手で海を豊かにする「里海」の復活を目指す。

 瀬戸内海は高度経済成長期に生活排水などに含まれる窒素やリンで赤潮が多発し、「瀕死(ひんし)の海」と呼ばれた。その後、瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)で厳しい排出基準が課され、赤潮を招いた「富栄養化」の状態は改善された。

 一方、近年、播磨灘では海水中の窒素量が環境基準の半分以下の海域も出ており、窒素を栄養分とする色素が減ってノリの色落ちが深刻化した。生産量はピーク時の4割に落ち込む年もあり、ノリ養殖の従事者が約20年で半減する一因となっている。

 こうしたことから、2015年の瀬戸内法改正では、人の手で漁業資源を回復させる「豊かな海」の事業推進も盛り込まれた。

 兵庫県では、ノリが育つ冬場に下水処理水の窒素濃度を上げる「季節別運転」を08年から試行。運転の効果だけではないものの、ノリの色調が1.5倍程度改善した、というデータもある。今後、3処理場で、冬場は従来の1.5倍程度に濃度を引き上げ、45年まで維持する計画。濃度を上げても、環境基準の枠内にとどまるため、赤潮の危険はないという。

 国土交通省によると、季節別運転は九州の有明海で初めて実施され、今年3月末で20都市で導入。瀬戸内海では広島、愛媛、香川県でも各1~2カ所実施しているが、兵庫県の方針は全国最大規模で、今後、追随する動きが出る可能性もある。【井上元宏】

 柳哲雄・九州大名誉教授(沿岸海洋学)の話 瀬戸内海は漁獲量全体が落ちており、窒素やリンを増やす必要がある。ただ、増やしすぎると、冬場にノリに吸収されなかった分が海底に沈殿し、夏に赤潮を引き起こす可能性もある。生態系全体に配慮して、取り組みを進めていく必要がある。

最終更新:9/15(土) 13:52
毎日新聞