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<安室奈美恵さん>平成駆け抜け 自立を体現、女性共感

9/15(土) 22:08配信

毎日新聞

 15日に出身地の沖縄で歌手の安室奈美恵さん(40)が最後のステージに立った。「自分らしさ」を大切にすることを体現した安室さんは、沖縄の人々を勇気づけ、女性の憧れの存在だった。引退宣言から1年。平成を駆け抜けた歌姫を心に刻もうと、会場周辺は多くのファンで沸いた。

 この日、安室さんはロングブーツに黒いパンツ、「I ♥ music」と書かれた半袖姿で登場。ステージを左右に駆け回り、8曲を熱唱した。そして最後に「来てくださった皆さん、本当にありがとうございました」と笑顔で手を振り、ステージを後にした。アンコールを期待したファンが奈美恵コールを続けたが終演。泣き出すファンもいる中、会場内は「ありがとう」の声に包まれた。

 安室さんの出身地、沖縄は戦後、米統治下に置かれ、1972年に本土復帰を果たした。しかし、本土の人々にとっては遠い島であり、偏見は根強かった。そんな中、安室さんが登場し、本土の人々と沖縄の距離を縮めた。

 「沖縄と言えばアムロちゃんだね。沖縄っていいよね」。那覇市のシンガー・ソングライター、安次嶺(あしみね)奈菜子さん(32)は十数年前に役者を夢見て上京した時、出身地を言えばそう言われた。慣れない大都会での生活に疲れた時は安室さんの曲を聴いた。

 <♪どこへでもつづく道がある>

 好きだった曲「Don’t wanna cry」に勇気づけられた。「安室さんは沖縄の宝、誇りです」

 安室さんは20歳で結婚し、離婚後もシングルマザーとして長男を育てながら音楽を追求した。その生き方は女性の支持を得た。

 東京都狛江市の地方公務員、大脇瑶子さん(35)はこの日、会場から漏れる歌声でも聴きたいと、学生時代の同級生と一緒に沖縄に来た。デビュー直後からのファンで「つらいことがあっても、ぶれずに自分の思う道を追い求める姿が格好よかった。私の理想像だった」と寂しがった。

 米国人の夫との間に2歳の長男がいる沖縄県宜野湾市のホテル従業員、ジョン麻美さん(33)も「育児に悩んでいた時にアムロちゃんの曲に励まされた」と引退を惜しむ。

 沖縄県出身の与那覇恵子・東洋英和女学院大教授(現代日本文学)は「自分の音楽を追求し、ステージで自分のやりたいことを思い切り表現した安室さんの姿に、沖縄の人が勇気づけられ、女性が共感したのだろう。引退も自分で道を選んできた延長線上にあるんだと思う」と話した。【遠藤孝康、青木絵美、宗岡敬介】

 ◇平成の終わり実感

 アイドル評論家の中森明夫さんの話 まだ40歳で今も若々しく、引退は惜しい。小室哲哉プロデュースを離れてからはほとんど歌番組には出ず、楽曲制作とライブ活動などに専念して一人のアーティストとして成長した。結婚や出産、離婚を経て歌い続けた安室さんは「女性の自立の物語」でもあった。昭和という時代に美空ひばりさんがいたように、平成という時代の歌姫は安室さんだ。安室さんの引退は、SMAPの解散や「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんの死と同様に、平成が終わることを実感させる。今後、平成を振り返る時、安室さんの歌声が思い出されるだろう。

最終更新:9/16(日) 5:17
毎日新聞