ここから本文です

北村龍平監督「ハリウッドは魔界」 悶々からの脱却で撮った低予算の新作「ダウンレンジ」で“原点回帰”

9/15(土) 19:14配信

産経新聞

 米ロサンゼルスを拠点に映画を撮り続けている北村龍平監督(49)の新作「ダウンレンジ」が15日に公開される。アメリカの山道を車で走っていた若者6人が正体不明のスナイパー(狙撃手)に襲われるスリラー映画。低予算ながら大胆な発想とアイデアで勝負した北村監督は「原点回帰な映画」と語る。

 監督は「ハリウッドという“魔界”にいると映画作りがなかなか進まない」と苦笑する。2008年に拠点をハリウッドに移し、これまで2本の作品を世に送り出した。「巨大なシステムの中にいると、素晴らしい脚本で役者が決まっても製作が進まないという、運任せなところがある。それで悶々(もんもん)としていた」

 そこで信頼を寄せる脚本家のジョーイ・オブライエン氏と茶飲み話をしていたところ「スナイパーに襲われることほど恐ろしいことはない」というアイデアが出た。「ハリウッドという複雑なパズルの一部になってしまう」のを避けるため、旧知の真木太郎プロデューサー(アニメ映画「この世界の片隅に」など)に電話した。「『ちょっと3分だけ聞いてくれる? こんな設定を思いついたんだけど』と提案すると『面白い。やろう』と言ってくれた」。北村監督はそれから実写版『ルパン三世』を撮るため日本に帰国した。「『ルパン三世』でベストを尽くしたので、あえて真逆なことをやりたい、原点に戻りたいというので次にこの映画を作ったんです」

 監督の言う「原点」とは、低予算で作っていたころの自主映画「DOWN TO HELL」(1997年)や「ヒート・アフター・ダーク」(99年)、「VERSUS-ヴァーサス-」(2001年)のことだ。「普通だったら100万回諦めるところを諦めずに撮ったから、結果的にハリウッドにつながった。いつでも腹はくくっているんですよ、“ここに戻れる”って」

 立ち往生した若者たちに向けられる凶弾。彼らは助かるのか。スナイパーの目的は?…本作のことを北村監督は「日本人のプロデューサーと監督がアメリカで作ったインディーズ映画」「広大な空間で閉所恐怖症の感覚が味わえる映画」と説明する。「昔見た『激突!』『ヒッチャー』『悪魔のいけにえ』といった、説明が何もない、ただ恐ろしい映画が最近ない。今はなんでも状況を説明しようとする映画ばかり。もっと体験型というか本能に“ガツン!”とくるような映画を作りたかった。これで僕の存在意義を世界に証明したいという思いがあったんです」

 ■北村龍平 大阪生まれ。17歳で豪州へ渡りスクール・オブ・ビジュアル・アーツ映画科に入学。1997年に自主映画「DOWN TO HELL」が第1回インディーズムービー・フェスティバルでグランプリ受賞。99年、渡部篤郎主演「ヒート・アフター・ダーク」で劇場映画デビュー。2001年の長編デビュー作「VERSUS-ヴァーサス-」が世界的な評価を得る。ほか「あずみ」「ゴジラ FINAL WARS」「ルパン三世」を発表。拠点をハリウッドに移し「ミッドナイト・ミート・トレイン」「ノー・ワン・リヴズ」を手がけた。

(WEB編集チーム 伊藤徳裕)

最終更新:9/19(水) 9:37
産経新聞