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【自民総裁選】安倍政権を問う 「弱者切り捨て」「成果なき経済、外交」

9/15(土) 10:53配信

カナロコ by 神奈川新聞

【時代の正体取材班=石川泰大、田崎基】4日ぶりに論戦が再開された自民党総裁選。14日の日本記者クラブ主催の討論会では、安倍晋三首相、石破茂元幹事長の看板政策だけでなく、政治姿勢も大きな論点となった。批判も浴びてきた5年半余りの政権運営。いかに反省し、次に生かしていくのか。今後の展開を危ぶむ2人の識者に聞いた。

◆社会活動家・仁藤夢乃さん 「寄り添う目線」こそ

 私は虐待や貧困の中を生き抜いている子どもたち、女性への性暴力被害に向き合う活動をしています。今の政権には弱者に寄り添う目線が全く感じられず、不信感を持っています。

 例えば、子どもの貧困対策として立ち上げられた「子供の未来応援国民運動」の1周年の集い(2016年11月)で、安倍首相が「日本の未来を担うみなさんへ」というメッセージを発表しました。

 〈あなたは決してひとりではありません〉〈あなたが助けを求めて一歩ふみだせば、そばで支え、その手を導いてくれる人が必ずいます。あなたの未来を決めるのはあなた自身です〉(抜粋)というものでした。

 国が子どもの貧困に取り組むのは当たり前です。しかし、このメッセージからは政府が責任を持って対策に取り組む姿勢や期待が感じられず、とてもがっかりしました。自分で未来を決めたり選んだり、やりたいことにチャレンジしたりすることができない、許されない環境で育ってきた子どもたちがたくさんいます。

 大人や社会が責任を語らず、「未来を決めるのはあなた自身」と言われたら、当事者はどう思うでしょう。「自己責任」のように感じて追い詰められるかもしれない。そんな配慮も想像もできないのは、その程度の認識しかないからです。

 私が出会う子どもたちは教育も満足に受けられない、政治のことなんて分からない。無関心ではなく、目を向ける余裕がないのです。自分たちが声を上げることで何かを変えられるということを知らない。だから、諦めている子が多い。

 でも、弱者をどんどん切り捨てていくような今の政治はやっぱりおかしい。政治って本来、苦しい立場や弱い立場にある人のためのものだと思うんです。「自己責任」を押しつけるのではなく、一人一人に寄り添った政治に変えていかなければいけないと思います。

 1989年生まれ。虐待や性被害に遭うなどした居場所のない少女たちを支援する「Colabo(コラボ)」代表。著書に「難民高校生」(ちくま文庫)、「女子高生の裏社会」(光文社新書)。

◆政治学者・白井聡さん 「やってる感」決別を

 具体的成果を欠く安倍政権がなぜこれほど長期に及ぶのか。通底するキーワードは「やってる感」だ。

 安倍政権がこの「やってる感」の演出に成功した筆頭格は「アベノミクス」だろう。「景気が良くなってきた」という気分を漂わせ、漂えば本当に景気が良くなるという経済政策だ。

 だがそのために実は非常に危険な手を打っている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を株式購入に充て、日銀は株を買い支え、国債を購入し続けている。「異次元の金融緩和」「デフレ脱却」と繰り返し5年半余りたつが「目標達成」の出口はまるで見えない。この間に国民の実質所得は下がっている。つまり全てが虚像なのではないか、ということ。

 外交もそうだ。拉致問題も朝鮮半島問題も対米、対中関係も、何か成果があるだろうか。対ロ外交では最も露骨に「やってる感」を演出してきたが、プーチン氏との仲の良さを装っても北方領土は返ってこない。

 そしてこの「やってる感」は日本社会へと蔓延(まんえん)している。いわゆる「STAP細胞事件」も、世界的企業である東芝による粉飾決算事件もその典型だろう。

 逆に見れば、安倍政権はこの「やってる感」の重要性を的確に捉えていて、だからこそ長期政権を実現しているとも言える。

 だがそれももう限界がきている。総裁選で安倍氏は盤石と見られているが、実態は真逆だ。安倍氏に投票するよう自民党国会議員に念書を書かせたり、対抗馬を推す議員や地方議員にまで圧力を加えたりしている。これは恐怖政治の手法だ。本当は自信がない。だから恫喝(どうかつ)に頼る。

 安倍政権の長期化は日本社会崩壊の反映と言える。既に「このままでは大変なことになる」という段階は過ぎた。「やってる感」だけの政治を受け入れていいはずがない。

 京都精華大専任講師。1977年生まれ。2013年「永続敗戦論」(太田出版)で石橋湛山賞、角川財団学芸賞受賞。近著に「国体論 菊と星条旗」(集英社新書)。

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