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<北海道地震>美しい星空の下 「故郷がなくなった」

9/16(日) 8:42配信

毎日新聞

 未明の空には数え切れないほどの星が光っていた。

 6日午前3時8分ごろ、北海道で観測史上初めての震度7の強い揺れに襲われた厚真町。特に吉野地区は山沿いの集落の大半が土砂崩れにのみ込まれ、住民34人中19人が亡くなった。

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 「故郷がなくなった」。吉野地区に生まれ、高校卒業までの18年間を過ごした中田孝(たかし)さん(75)は12日、苫小牧市から足を踏み入れ、変わり果てた故郷の姿に絶句した。生家にいたおいの朗(あきら)さんが死亡し、近所の親族3人も亡くなった。

 4人の命を奪った山はかつて遊び場であり、山菜採りや山奥の畑に行く迂回(うかい)路もある生活に密着した場所だった。山を背にして家の前に広がる田園には、春になるとホタルが飛び交った。

 「夏は虫取りをしたり、収穫後の畑で三角ベースで近所の子と遊んだり。冬は裏山で木製ソリで滑ったりもしたっけ」と思い出を語った後、「本当にここが自分が育った場所なのかと信じられんかった。自然災害やから、誰も恨むちゅうわけにもいかん」。声を詰まらせた。

 町中心部から吉野地区に入った梅原智哉さん(38)は、幼いころによく泊まりに来た親族の家を見つめ、途方に暮れていた。曽祖父母らの遺影を見つけようとスコップを手に訪れたものの、家は高さ約5メートルの土砂の下に埋まっていた。

 当時は無人で被害者は出なかったが、家の一部だけが土砂の下からのぞく。山に沿って伸びる道道235号の上の土砂が救出活動のため掘り出され、以前の直線道路が曲がりくねっていることがわかった。「周囲の景色が変わり、どこに家があったかも分からない」。それでも、夜空は土砂とがれきに覆われた地上とは無関係にかつての美しい姿を見せる。「ここは本当に星がきれいなんです」とつぶやいた。【貝塚太一】

最終更新:9/16(日) 8:42
毎日新聞