ここから本文です

危機きっかけに業績アップも リーマン・ショック10年、回復力に格差

9/16(日) 18:00配信

神戸新聞NEXT

 得意先が倒産。単価が下がったまま-。神戸新聞社とみなと銀行(神戸市中央区)がリーマン・ショック10年を機に実施した中小企業アンケートで、22%が今も業績を戻せていないと回答した。その後の景気拡大局面で恩恵をつかみきれていない企業のトップは苦渋の表情を浮かべる。一方、順当に業績を上向かせたところも多く、赤字を契機に収益構造を見直した企業もあった。

【グラフ】リーマン・ショック時、ショック後に取り組んだ対応策や経営改革

 「朝から連絡がとれません」。神戸市内の食品卸の社長(69)は、従業員からの電話で体を震わせた出来事が忘れられない。リーマン・ショックの数年後。20年来の取引があった小売店が破産した。この10年で、他の販売先も含め計約6千万円の売掛金が未収となった。

 会社を守るために給与や賞与を抑えつつ、子どもが進学した従業員に、そっと特別手当を振り込んだこともある。贈答品用の食材を扱っており、リーマン危機の余波は今もギフトの需要減という形で尾を引く。直近の売上高はリーマン前の7割どまりだ。社長は「土産用の商品を開発して業績回復を目指す」と話す。

 「うちは業界の末端だから…」。同市内の港湾運輸業の経営者(68)はつぶやいた。神戸港で船内に搬入した輸出貨物の固定作業を請け負う。リーマン危機で2009年の売上高は前年から4割減。作業単価が8%引き下げられた影響が出た。

 3ポイントの改善を認めてもらったが、今は交渉もままならない。港の荷動きは活況を取り戻したものの、海運の世界的な競争激化でコスト削減圧力は強く、単価改善の足かせになっているという。「売り上げはリーマン前の8割弱。兵庫県内の最低賃金が上がる中で、低い他県の港の業者に仕事が流れないか心配だ」

 同じ港湾関連でも景気拡大の波に乗る企業がある。

 輸出入コンテナの内航海運大手、井本商運(神戸市中央区)は、この10年で売上高が4割増えた。リーマン・ショックをあくまで実体の薄い金融の危機ととらえ、現物のモノの動きはすぐに復調すると判断。14隻あった運搬船を死守した。

 神戸、大阪両港に国際貨物を集める国の政策が奏功。国内輸送の海運シフトも追い風となった。井本隆之社長(58)は「影響はみじんも感じない」と言い切る。

 ボウリング用品を輸入販売するサンブリッジ(同市須磨区)は、赤字に転落したリーマン危機をきっかけに、無駄の多かった企業体質を筋肉質に変革した。

 まず無理な値引きや拡販をせずに体力を温存。役員報酬を4割減らし、社員の給与も2割削減した。もともと低水準の若手には、昇進させてからカットすることで削減幅を最小限に抑えた。事務所賃料などあらゆる費用を削り、08年から3年で固定費を4割近く抑えた。満尾克久副社長は「本当に大変だったが、危機があったからこそ会社が生まれ変わった」と話した。(中務庸子、塩津あかね、大久保斉)

最終更新:9/17(月) 12:20
神戸新聞NEXT