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仏大統領、旧植民地独立派の拷問「国家責任」認める 「汚い戦争」の事実解明は「歴史家に」懸念も 

9/16(日) 16:44配信

産経新聞

 【パリ=三井美奈】フランスのマクロン大統領は、旧植民地アルジェリアの独立戦争(1954~62年)中、仏政府が拷問を容認していたと認め、当時死亡した独立運動家の妻に謝罪した。歴代大統領で初めて、植民地の「汚い戦争」で組織的な国家責任に踏み込んだことで、波紋を広げている。

 この運動家は57年、仏軍に拷問され、失跡した数学者のモーリス・オーダン氏。アルジェリア共産党員で、当時25歳だった。マクロン氏は13日の声明で、オーダン氏は拷問中に死亡、あるいは処刑されたと発表し、背景には治安部隊による反体制派「容疑者」の逮捕・拘禁を認めた法制度があったとした。同日、パリ郊外に住むオーダン氏の妻を訪ね、「許しを請う」と述べた。

 フランスでアルジェリアでの仏軍の残虐行為はタブー視されてきた。2001年には元将軍が手記で、拷問で独立派を多数殺害したことを認め、政府は黙認していたと明かしたが、当時のシラク大統領は元将軍の勲章を剥奪し、責任論議を封印した。オーダン氏の妻は07年、夫の死の真相解明を当時のサルコジ大統領に書簡で訴えたが、返事はなかった。

 マクロン氏は昨年2月の大統領選中、「植民地支配は『人道に対する罪』だ。過去の蛮行にわれわれは向き合うべきだ」と発言。今回、国家責任に踏み込んだことについて、ルモンド紙は社説で、真実解明はフランスとアルジェリアの「歴史の和解につながる唯一の道」とたたえた。一方、保守系フィガロ紙は「戦争の惨事の解明は歴史家に任せるべきだ」と主張。アルジェリア系住民が仏政府への反発を強めれば、国内の対立を招くと懸念を示した。

 アルジェリア独立戦争では約50万人が死亡したとされる。フランス人入植者も数万人が殺害され、今も禍根が残る。マクロン氏は13日の声明で、公文書や証言による当時の実態解明を訴えたが、オーダン氏のように行方不明になった数千人の独立派への対応や、弾圧責任者の扱いには言及しておらず、今後論議となる可能性がある。

最終更新:9/16(日) 17:11
産経新聞