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【漢字トリビア】「寿」の成り立ち物語

9/16(日) 11:31配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「寿(ことぶき)」、「長寿」「寿命」の「寿(ジュ)」。九月の第三月曜日は国民の祝日、敬老の日。「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日」と定められています。

「寿」という字の古い字体(「壽」)を見ると、まず「武士」の「士」の下に横線をひき、その線の最後を左斜め下にはねます。
この部分は「老人」の「老」「老いる」という漢字の部首、「おいがしら」または「おいかんむり」と呼ばれます。
これは、年老いて背が曲がり、髪を長く垂らした老人が、杖をつく様子を横から描いたものだといわれています。
下半分には「工場」「工作」の「工」と書いてその下に横線を一本、その下の左側に「口」、その右に「寸法」の「寸」と書きます。
この部分は、田んぼのあぜ道、または畝(うね)を表しているといいます。

杖を頼りに、ゆっくり、ゆっくり。
稲を刈り取った後、広々と開けた田んぼの間を、年老いたいにしえの人が歩いています。
ふさふさと豊かな稲架掛け(はさかけ)に手を触れ、美しく整えられた畝(うね)を眺め、曲がった腰を時折伸ばして、遠く色づく山並みを仰ぎ見る人。
夕暮れの風になびく長い髪は、その人が生きてきた年月の長さを物語ります。
ありがたき今日のよき日よ、いつまでも。
一族そろって収穫のときを迎えた喜びを胸に、年老いたその人は、感謝の祈りを捧げます。
そろそろ、宴が始まる時間。
自分だけの寿ぎの儀式を終えた老人は、夕映えを背に、家路に着くのです。

ではここで、もう一度「寿」という字を感じてみてください。

曾祖父母、祖父母、年老いた父母。
口うるさかったり頑固だったり、正直、分かり合えないこともあるけれど、今、自分がこの世を生きているのは、あなたたちのおかげです。
だからやっぱり、ありがとう。
たまには素直に、言葉にしてみましょうか。
どうかいつまでも、漢字に描かれたいにしえのあの長老のように、ともに生きる喜びを分かちあうことが、できますように。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『漢字の気持ち』(高橋政巳、伊東ひとみ/著 新潮文庫)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年9月15日(土)放送より)

最終更新:9/16(日) 11:31
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