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マラソン2時間の壁を人類は破れるのか?キプチョゲの世界記録誕生理由とは

9/18(火) 5:00配信

THE PAGE

42.195kmという距離を人類はどれだけ速く走ることができるのだろうか。
その疑問を考えるうえで、9月16日のベルリンマラソンは衝撃的なレースだった。主役は“生きる伝説”になりつつある、エリウド・キプチョゲ(33、ケニア)だ。
 マラソン戦績は、これまで10戦9勝。数々のメジャー大会を制してきた男が2時間1分39秒の世界記録をマーク。デニス・キメット(34、ケニア)が持っていた世界記録(2時間2分57秒)を1分以上も更新したのだ。

 日本勢は中村匠吾(26、富士通)が大幅ベストの2時間8分16秒で4位に食い込むも、キプチョゲに6分半以上の大差をつけられた。今年2月の東京マラソンで設楽悠太(26、ホンダ)が日本記録(2時間6分11秒)を樹立するなど、日本は2020年東京五輪に向けて、活気づいている。その中で誕生したリオ五輪王者の大記録は、日本陸連の河野匡・長距離マラソンディレクターが、「我々にとってはショッキングな結果です」と話すほど異次元なものだった。

しかも、今回のレースを冷静に分析してみると、キプチョゲはまだまだタイムを短縮する余地を残している。まずは前世界記録保持者のデニス・キメットと今回のレースを比較してみたい。下記の表は両者のスプリットタイムとラップタイムだ。ともに高低差が約20mで、高速コースとして知られているベルリンマラソン(14年と18年)で樹立した記録になる。

 キメット      キプチョゲ
5km  14:42    14:28
10km29:24(14:42)29:01(14:33)
15km44:10(14:46)43:38(14:37)
20km58:36(14:26)57:56(14:18)
ハーフ1:01:451:01:06
25km1:13:08(14:32)1:12:24(14:28)
30km1:27:38(14:30)1:26:45(14:21)
35km1:41:47(14:09)1:41:01(14:16)
40km1:56:29(14:42)1:55:32(14:31)
ゴール2:02:57(6:28)2:01:39(6:07)

4年前のキメットは、中間点を1時間1分45秒で通過。ペースメーカーが離れた30kmからペースを上げて、4人の選手を揺さぶった。35km付近からは、エマニュエル・ムタイ(33、ケニア)との一騎打ちになり、38km過ぎにスパートをかけている。ライバルの存在もあり、後半は1時間1分12秒というネガティブスプリットになった。

 今回のキプチョゲはというと、ペースメーカーに世界記録超えのハイペースを要求。序盤で抜け出すと、中間点をキメットより39秒も速い1時間1分06秒で通過した。しかし、驚異的なスピードに3人のペースメーカーが対応できない。15km過ぎから次々と脱落したため、25.7km以降は単独走となった。

 25km過ぎには唯一ともいえる勾配があるものの、30kmまでの5kmをペースアップ。30~35kmは最速ラップ(14分16秒)を刻んでいる。競う相手がいない中で、本当に驚異的だ。そして、最後の2.195kmはキメットより21秒も速く、後半は前半を39秒上回る1時間0分33秒。これは余力があった証拠になる。

 前半をもう少し速く入り、ペースメーカーが30kmまできっちり引っ張ることができれば、タイムはまだまだ短縮できる。キプチョゲには2時間0分台のポテンシャルは十分にあるだろう。
 ただ、今回もマラソンで2時間4分台のタイムを持つ選手がペースメーカーを務めており、それ以上のランナーをペースメーカーとして用意することが、最大の難関になる。

 レース後のインタビューでは、「このレースに十分に備えてきた。信じられないくらいうれしい」と笑顔を見せたキプチョゲ。
 彼が2時間1分39秒というタイムを出すことができたのは、ランナーとしての速さと強さがあるのはもちろんだが、それ以外に、2つの理由があると思う。ひとつはメンタル。もうひとつはシューズだ。

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最終更新:10/1(月) 13:24
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