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ルネサス+Intersil+IDTの“三位一体”で新たな勝者へ

9/19(水) 11:45配信

EE Times Japan

■高いシナジー

 2018年9月11日に、IDT(Integrated Device Technology)を約67億米ドル(約7300億円)で買収すると発表したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。2017年2月に約32億米ドル(当時の為替で約3200億円)で買収を完了したIntersilに続く、大型買収となった。EE Times Japanは、同年9月12日に米国EE Timesとともに、ルネサスの社長兼CEOである呉文精氏と、IDTのプレジデント兼CEOであるGregory Waters氏にインタビューを行った。

今回の買収における業績面での効果 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

 9月11日に開催した記者発表会で、ルネサスの社長兼CEOを務める呉文精氏が最も強調したポイントは、ルネサスとIDTの両社の事業領域に重複がないため大きいシナジーを期待できることと、データセンター市場への参入だ。

 ルネサスはこの買収で、短期的なコスト効率化効果としては年間で約8000万米ドル、中長期的には約9000万米ドル、収益面でのシナジーとしては中長期的に営業利益ベースで1億6000万米ドルと見込んでいる。

 この効果を達成できる理由について、呉氏、Waters氏ともに製品に重複がないことを強調。それだけでなく、呉氏によれば顧客基盤でもほとんど重複はないという。ルネサスのマイコンやSoC(System on Chip)、Intersilの資産であるパワーマネジメント製品、そしてIDTのミックスドシグナル製品は、産業や車載など「あらゆる分野で両社の成長を加速する」とWaters氏は述べる。

 実際、IDTの事業領域「車載および産業」「通信」「民生」「データセンター」のいずれにおいても、ルネサスとのシナジーを見いだせると両氏は述べる。

 車載分野では、IDTの車載向けセンサーインタフェースやセンサー信号コンディショナーはルネサスの販路を活用できる。通信向けとしてIDTが強みを持つRF製品は、基本的には4G、5Gといったモバイルネットワーク向けが中心だが、5Gは自動運転で使用できると期待されていることから、自動車分野との親和性は高い。民生では、例えばIDTのワイヤレス給電とルネサスの低消費電力マイコンを組み合わせ、ウェアラブル機器やIoT(モノのインターネット)機器向けに展開できる。さらにWaters氏は「ワイヤレス給電は電気自動車(EV)でも注目されているが、今後2年以内にEV向けのワイヤレス給電は本格的な実用化と普及が始まるとみている。そうなれば、ルネサスが持つ強力な車載ビジネスとのシナジーを、より発揮できるようになるだろう」と付け加えた。

 ただし、データセンターについては、「技術的な面でのシナジーは、それほど大きくはない」と呉氏は述べる。現在、ルネサスがデータセンター向けに提供している製品には、Intersilが持っていたパワーマネジメント製品やメモリなどがあるが、呉氏は「ここはIDTが単独で強固な地位を確立している事業。ルネサスがIDTとともにデータセンター向けの製品を開発するというよりも、サポートしていくというイメージだ。IDTのデータセンター向けビジネスは非常に効率がよく、健全に成長している事業である」と語った。

 Water氏は、「IDTにおいてデータセンター事業は既に、売上高の40%を占める最大の事業となっていて、今後も急速な成長が期待できる。将来的にルネサスのパワーマネジメント製品なども活用できれば、さらなる成長が期待できる」と付け加えた。

■買収はあくまで“成長加速”が目的

 現在、IDTの従業員数はグローバルで1900人。買収後の人員削減の可能性について呉氏は、「今回の買収の目的はシナジーを生かし、成長を加速することだ。IDTもルネサスもリストラ(構造改革)によってコスト削減を図ってきた経緯はあるが、今回の買収はあくまで成長目的であり、人員の削減は考えていない」と述べる。Waters氏も「”どれくらいの従業員を残すか”ではなく、”どれくらいの成長していけるか”が、今回の買収のポイントになる」と続けた。

 一方でIDTの事業部門について見直す可能性はあるという。ただし、それは単に統合に伴う作業で、何かの事業を手放すということではないようだ。呉氏は「IDTでは全ての事業部門がうまくいっている」と述べている。IDTの2018年3月期の売上高は8億4280万米ドル(約927億円)、営業利益は1億1090万米ドル(約122億円)。Waters氏は、「われわれは、半導体メーカーの中でも、過去5年間の成長率が最も高い企業の一つだ。2014年度から2017年度にかけては、年率14.5%で成長してきた」と述べた。

 Waters氏は「IDTは日本でも業績を伸ばしている」と続ける。2018年度第2四半期におけるIDTの売上高で、日本の比率は4%である。2018年3月末で日本のマーケティングコミュニケーション部門の一部を引き上げたIDTだが、「特に4Gやデータセンターが日本では強い」と同氏は話す。IDTは、日本では通信とエンタープライズSSD、車載の3つに注力している。

■2018年6月に提案されていた買収

 ルネサスがIDTに買収案を持ちかけたのは2018年6月のことだ。その際、IDTは「売却は考えていない」と返答して終わった。「その後、ルネサスから、IDTとルネサスが統合することの利点を提示された。業績以外での非常に戦略的な利点だ。そこで将来的な成長の可能性を感じられたからこそ、今回の買収合併に至った」(Waters氏)

 今回の買収は、IDT株主総会や各国当局での承認などを経て、2019年前半に完了する予定だ。買収承認といえば、2018年7月にQualcommが中国当局からの承認を待てず、NXP Semiconductorsの買収を断念したばかりである。だが呉氏、Waters氏ともに、中国当局の承認については懸念していないと述べた。「中国当局の承認を阻むような要素は何もないと考えている。(NXPとQualcommの買収は破談になったが)NXPとQualcommとは全く異なる性質の買収だと考えている」(Waters氏)

 ここ数年でIntersil、IDTと立て続けに大型買収を決断したルネサスだが、今後のM&A戦略についてはどう考えているのか。呉氏は「マイコンとSoC、パワーマネジメントについては確固たる地位を確立していて、車載や産業機器でも強い顧客基盤を持っている。そのため、マイコンやSoCのメーカーの買収や、単に顧客基盤を拡大するためだけの買収は考えていない。アナログ、ミックスドシグナル、ワイヤレスが、当社が興味を持っている分野だ」と述べるにとどまった。

 Waters氏は、「マイコンに強みを持つルネサスと、ミックスドシグナルICに強みを持つIDT。両社の統合によって、半導体サプライヤーとしての新たな勝者となる」と強調した。

EE Times Japan

最終更新:9/19(水) 11:45
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