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働き方改革でオフィスはどう変わる?

9/19(水) 10:13配信

ニュースイッチ

既成概念を覆すデザインが採用される背景

 オフィスなど働く場所のあり方が大きく変わろうとしている。技術の進展やライフスタイルの多様化に後押しされ、今までにない新しいデザインをオフィスに採用する企業が増えた。同時に働く場所の多様化も進み、個人や企業が共同で使う「シェアオフィス」やデスク単位などで借りる「コワーキングスペース」の開設も相次ぐ。既成概念を覆すオフィスが生まれる背景に何があるのだろうか。

【バリューセンターの役割】
 日建設計内のデザイン専門チーム、NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab(NAD)の塩浦政也室長は、今の状況を「オフィスの“ゲーム”が変わった」と表現する。

 1カ所に大勢の人が集まるこれまでの働き方では、オフィスに対して作業の効率化を助ける「コストセンター」の役割が重視される。しかし、今のオフィスに求められているのは「人が価値を生み出す『バリューセンター』としての役割だ」と主張する。
 一方、三井ホーム子会社で空間デザインを手がける三井デザインテック(東京都港区)の見月伸一デザインマネジメント部長は、役割が変化した背景としてテクノロジーの発展を挙げる。「今後多くの仕事が人工知能(AI)に置き換わると言われる中で、人だからこそできる仕事を見付けるため、創造性を促進する空間が求められている」と指摘する。

【勤労の転換点】
 モバイル端末の普及も、働き方の変化を通してオフィス空間の変化に影響を与えた。ライフスタイルの多様化や自宅などオフィス以外で働く「テレワーク」の実施など、勤労に関連するさまざまな事象が転換点を迎えており、「既存のビジネススタイルのモデルに陰りが見えている」(見月部長)。

 さらに、NADの塩浦室長は、創造性を刺激するバリューセンターとしての役割は、「人と人との交流を促す『コミュニティーセンター』へと次第に移る」と、今後を見通す。

働き方改革と表裏一体のオフィス改革

【シェアオフィス開設相次ぐ】
 国内企業でも、三井不動産が提供する多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」や森ビルの「パーク6」、NTT都市開発の「リフォーク」など、大手デベロッパーによる開設が都心で相次いでいる。

 米系不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL、東京都千代田区)によると、東京都心5区(千代田、港、中央、新宿、渋谷)のコワーキングスペースは延べ床面積約6万2608平方メートル(6月時点)と、前年の約2倍まで拡大した。

 1拠点当たりの面積や席数も増加傾向にある。スペースの設置とともに、新規事業の創出に向けたサポートやプログラムを提供する動きも活発だ。

 シェアオフィスやコワーキングスペースは、イノベーションを生み出す重要な拠点として着実に地位を固めており、JLLでは今後も増勢が続くと予想している。

 NADの塩浦室長は「突き詰めていけば、街のいろんな場所で仕事ができるようになる」と展望する。ではオフィスデザインが変化すれば、働き方も自然と変わるのだろうか。三井デザインテックの見月部長は「デザインはあくまで手段」と指摘する。「オフィスを変えると同時に、仕事のプロセスを変えることがとても重要だ」。

 オフィスの革新と働き方改革は表裏一体との指摘だ。同社ではオフィスの企画段階で経営者に聞き取りを実施。事業の方針や課題を明確にした上で、部門長や社員向けのワークショップを開き「働き方のコンサルをする」という。

 さらに、創造性の発揮を軸にデザインされた“場所”において、「これまでのように労働時間を基準にした評価方法はそぐわない。一つの会社に時間と成果といった複数の評価軸が必要になる可能性もある」と見る。

 NADの塩浦室長も、「『人はなぜ働くのか』を深く掘り下げれば、もっと何かできるはず。コミュニティーセンターとしてのオフィスでは、働くことについて知恵を出し合う『プロセスイノベーション』でゲームが進んでいく」と、新しい働く場所の姿を描く。

 企業にとって、働きやすい職場環境は採用で重要なアピールポイントの一つ。ソフトとハードの両方をアップデートしなければ、人材獲得競争で生き残るのも難しそうだ。

日刊工業新聞・国広伽奈子

最終更新:9/19(水) 10:13
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