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新政府専用機お目見え 来春、運用開始

9/19(水) 15:30配信

ニュースソクラ

パイロットも客室乗務員も空自の精鋭

 2019年度から運用を開始する新たな政府専用機がこのほど、運航拠点となる航空自衛隊の千歳基地(北海道千歳市)に到着した。新たな政府専用機はボーイング777-300ER型で、来春から首相や皇室の外国訪問などに使用される。現行の政府専用機は「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747-400型で、1993年の運用開始以来、「空飛ぶ官邸」として日本の外交を輸送面で支えてきた。空自は来春の運用開始に向け、新型機を使った訓練を行なうことになる。

 新たな政府専用機は2018年8月17日、隣接する新千歳空港経由で空自千歳基地に到着。待ち構えた報道陣や航空ファンがその雄姿をカメラに収めた。現行機と同じく尾翼に日の丸を描いたほか、機体の側面に赤い曲線をあしらい、一目で新型政府専用機とわかる。新型機は内装工事を行なっていたスイスから新千歳空港に到着した。1基当たり約370億円という。

 首相ら政府要人や皇室を乗せる政府専用機は民間のパイロットではなく、航空自衛隊の隊員がパイロットを務める。客室乗務員も女性の航空自衛官だ。初代の政府専用機は日本航空が整備を担い、客室乗務員の機内サービスなども日航が自衛官に指導した。新型機の整備は全日本空輸が担当する。

 政府専用機の格納庫は千歳基地にあり、パイロットや客室乗務員も千歳基地に所属している。航空自衛隊がパイロットを務めるのは、有事の際、政府専用機が邦人救出のため紛争地に向かうこともあるからだ。普段は千歳基地で訓練・待機するが、任務の際は1時間半で羽田空港に駆けつける。パイロット、客室乗務員とも空自の精鋭部隊であることは言うまでもない。

 初代の政府専用機は1993年に運用を開始したが、前年の1992年から1993年にかけ、航空自衛隊は政府専用機のパイロットの習熟訓練を行なった。専守防衛が国是の航空自衛隊にとって、パイロットが海外の空港に出向く経験などなかったため、海外の主要空港まで実際に飛行し、安全に離着陸できるよう経験を積む必要があった。

 また、新千歳空港では滑走路を使った「タッチ・アンド・ゴー」(離着陸訓練)と呼ばれる訓練も綿密に行なった。これは政府専用機が滑走路に着陸(タッチ)した直後、ブレーキを使わず、再びエンジンのパワーを上げて離陸(ゴー)するもので、パイロットが滑走路で危険を発見した場合などに使う危険回避テクニックだ。1992年当時、北海道で自衛隊を取材していた筆者は、新千歳空港でタッチ・アンド・ゴーを繰り返す政府専用機を数え切れないほど目撃した。

 千歳基地で報道陣に公開された政府専用機に乗せてもらったこともある。「空飛ぶ官邸」の異名の通り、首相の執務室、記者会見室、随行員席、同行記者団席のほか、首相ら要人が使うシャワー室もあったと記憶している。政府専用機は同じ機材が2機あり、万一のトラブルに備えて、いつも2機が並んで飛行するということも、その時知った。千歳基地では政府専用機が2機並ぶ姿を何度も目撃した。

 新たな政府専用機も2機導入することが決まっており、もう1機は12月にも到着するという。来春の運用開始に向け、新千歳空港では新型政府専用機がタッチ・アンド・ゴーなど本格的な習熟訓練を行なうことになる。2基あるエンジンの片方を緊急時に停止して、着陸する訓練なども行なわれるだろう。

 政府は2014年8月、現行機の後継に777-300ERを採用することを決定した。777-300ERはの初飛行が2003年と決して新しくないが、「登場から一定の時間が経過し、十分な運用実績をもっている点が評価された」(航空自衛隊)という。747-400の後継として開発された777-300ERは「後継の政府専用機として順当な選択」(同)という。

 しかし、747-400の初飛行は1988年で、3年後の1991年に採用が決まった現行政府専用機と比べると、新型機の基本設計の古さは否めない。ボーイングには2011年に全日空が世界で初めて導入した787もあるが、「定員が395人程度と中型機で、777ほどの輸送力がない」(同)ため、採用されなかった。

 国内では日本航空と全日空も777-300を所有している。定員が500人前後とジャンボ機に匹敵する輸送能力があるが、エンジンがジャンボの4期から2期の双発機となるのが最大の違いだ。空自によると、エンジンを4基搭載する現行機に比べて新型機は燃費が約3割向上し、メンテナンス費用や運航コストを抑えることが可能という。

 退役した自衛隊機はスクラップになるのが通常だが、航空自衛隊は「日本初の政府専用機は歴史的価値がある」(関係者)として、退役後は民間に払い下げるなど有効活用する方針だ。航空幕僚監部はこの8月、民間企業などにアイデアを募集したほか、説明会も行なった。新型機の登場とともに、退役する現行機がどう活用されるのかも気になるところだ。

最終更新:9/19(水) 15:30
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