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2年間で2万個突破! 竹島水族館の「気持ち悪い」土産を作り出したプロ集団

9/20(木) 9:15配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「ラッコやイルカがいないという、『劣等感』があるんです。僕たちは生き物に頼らずにお客さんに来てもらう方法を探すしかありません。水族館として邪道かもしれませんが、そうでもしないと生き残れません」

普通のお土産品と同じ四角い箱(写真左)ではなく、オオグソクムシに酷似した箱を開発したのが最大のヒット要因だ

 竹島水族館の小林龍二館長(37歳)は、穏やかな笑顔で話しながらも危機感をにじませる。現在の竹島水族館は「毎月が過去最高の入館者を更新中」なほど人気を博しているが、わずか8年前までは閑古鳥が鳴いて閉館寸前の状態だったのだ。

 施設は狭く、予算は少なく、人員も少ない。常に新しいことを考え、周囲の協力を仰ぎ、お客さんに楽しんでもらえる努力を続けなければ水族館の存在はすぐに危うくなる――。小林さんは背水の陣を保って竹島水族館を引っ張り続けている。

 生き物に頼らずに客を喜ばせる方法として、小林さんや副館長の戸舘真人さん(38歳)が注目しているのが土産品コーナーだ。竹島水族館らしい魅力的な商品を並べることができれば、それを目当てに来てくれる客も増えるし、大人500円という安い入館料での収入を補うこともできる。まさに一石二鳥が狙える分野だ。

 定番商品の改革に関しては戸舘さんが担当している。そのくだりに関しては前回記事を参照してほしい。本稿で取り上げるのは、お土産品コーナーで爆発的な人気商品となった「超グソクムシ煎餅」だ。2016年春の発売から約2年半で2万個以上も売れている。

 全国各地で売られているお土産品のほとんどは、企画会社や問屋が開発を請け負い、流通コストや在庫リスクも負担する。その代わりにマージンを取っている。各地の温泉まんじゅうのように、味や形状がどこか似ている商品が多いのはそのためだ。しかし、「超グソクムシ煎餅」は企画から原料の内臓処理、箱の組み立て、在庫管理まで、小林さんをはじめとする飼育員が行っている。正真正銘の竹島水族館オリジナル商品なのだ。

地元の経営者勉強会に講師として参加。そこは「外部協力者」の宝庫だった

 小林さんたちは水族館員であり、土産品作りに関しては素人だ。外部のプロに協力してもらう必要がある。2015年の秋に好機が訪れた。竹島水族館のある愛知県東三河地方で有力な金融機関である蒲郡信用金庫の鷹丘支店(愛知県豊橋市)が主催の経営者勉強会に、小林さんが講師として呼ばれたのだ。

 勉強会参加者の1人であり、後に「超グソクムシ煎餅」のリアルな箱作りを担うことになる富田委千弘(いちひろ)さんは小林さんの第一印象を笑いながら振り返る。

 「V字回復は僕たち経営者にとって憧れの言葉です。それを実現した小林さんに会いに行こうと思っていたら、『こちらから伺います』と鷹丘支店まで来てくれました。ジーパンとTシャツで茶髪の人が来て、最初は館長だとは思いませんでしたよ。でも、いろんな困難を乗り越えて竹島水族館を立て直したお話を聞いて、すごいなこの人! と刺激を受けました」

 富田さんは80年の歴史を誇る箱秀紙器製作所の三代目社長で年齢は50歳。ダンボール箱からお菓子の化粧箱までを幅広く扱う「箱屋」としてのキャリアも長く、仕事人としての自信を深めているはずだ。そんな富田さんが初対面で「すごいな」と小林さんに尊敬の念を抱いたところから、「超グソクムシ煎餅」プロジェクトは始まった。

 言いだしっぺは豊橋市内で和菓子店「童庵」を営む安藤チヒロさん(43歳)だった。勉強会の中で小林さんが「入館料収入だけでは限界がある」と本音をこぼしたのをキャッチして、独自の土産品開発を提案したのだ。

 菓子は童庵、箱は箱秀が作成を請け負える。さらに、この勉強会のリーダーである堀本貞臣さんはデザイン部門も擁する会社の代表である。良い企画さえあれば、すぐにでもモノづくりができる体制が偶然に整っていた。

 小林さんにはアイデアがあった。地元の漁師が持って来てくれる魚介類の中に、アナゴ漁の仕掛けに入ってしまうオオグソクムシがたくさんいる。何百匹もいるので全ては飼育できない。仕方なく、他の水族館に譲るなどしていた。「もったいない」と感じた飼育員の三田圭一さんが、オオグソクムシを試食した様子を発表して人気を集め始めていた時期でもある(関連記事を参照)。

「お客さんの中にも『私も食べてみたい』という人がいます。ならば、もう少し食べやすい形にして提供すればどうか、と思っていました」

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