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「若おかみは小学生!」旅館“春の屋”のモデルは宮崎駿監督の紹介? 高坂希太郎監督が明かす制作秘話

9/20(木) 19:00配信

アニメ!アニメ!

2003年から2013年の10年間で20巻が刊行され、累計300万部発行の人気児童文学、『若おかみは小学生!』の劇場アニメが9月21日に全国公開を迎える。
監督は、『千と千尋の神隠し』などのジブリ作品の作画監督、そして『茄子 アンダルシアの夏』の監督として知られる高坂希太郎が15年ぶりのメガホンを取った。また脚本は、『聲の形』や『リズと青い鳥』の吉田玲子が担当している。

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TVアニメ版は2018年4月から放送されているが、本作では原作20巻分のエッセンスを1本の映画に凝縮し、また原作にはないエピソードも追加。子どもだけでなく大人にも存分に楽しめる内容となっている。
2018年6月に開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭のコンペティション部門にも選出され、高い評価を得た本作。高坂監督に本作の魅力、原作との相違点などについて話を聞いた。
[取材・構成=杉本穂高]

『若おかみは小学生!』

2018年9月21日全国公開ロードショー

原作の魅力を損なわず大人でも楽しめる作品に
高坂希太郎監督
――まずこの原作にはどのように出会ったのですか。

高坂希太郎(以下高坂)
趣味で自転車に乗っているのですが、自転車仲間でありアニメーションスタジオ・DLEの谷(東)くんから、「今度『若おかみは小学生!』という児童文学をアニメ化するから、イメージキャラクター描いてほしい」と頼まれたのがきっかけです。

――TVアニメシリーズの監督である谷さんからお話をいただいて、原作をお読みになられたんですね。実際に原作を読んだ印象はいかがでしたか。

高坂
児童文学、それも女児向けの作品はこれまで縁がなかったので、最初は苦手意識があったんですけど、読み進めてみたらさすがベストセラー作品だなと思いました。
1巻に盛り込まれるファクターがたくさんあって、なおかつ上手くまとめられていてすごいなあと感心しました。


――原作のどんな点に惹かれましたか。

高坂
旅館が舞台ということで“旅館根性もの”かなとステレオタイプに捉えていたのですが、幽霊が現れたり、ちょっとクセのあるお客さんのやりとりも面白くて、思っていたのと違うぞという意外感がありました。
特に今まで接してこなかったジャンルなので、読み進めてみると女の子ならではの描写が新鮮に感じられました。

――単純な根性ものではなく、テーマのひとつとして働くことの楽しさみたいなものがありますよね。

高坂
そうですね。あと大人ではできない、小学生ならではの境界線をグイグイと超えるようなコミュニケーションを上手く利用して描いているところも興味深かったです。

――非常に長い原作ですし、一本の映画にまとめるのは大変だったのではないでしょうか。

高坂
最初読んだ時に、これはTVシリーズ向きだと思って、谷くんがTVシリーズでやると聞いて応援していたのですが、何年かしてから「映画もやるから監督お願いします」と言われたんです。「どういう風に作るか、采配はお任せします」という感じだったので、どうしようかと思いましたね。(笑) 
数ある原作のエピソードから1つ抜粋して、映画化するのか、今回みたいに全部を1つにまとめるか悩みましたが、やはり成長を描いているのが長編小説の醍醐味なので1巻から20巻までをまとめた形にしました。

――映画化に際して、原作にないエピソードも入れていますね。

高坂
原作ではあまり触れられていないんですけど、「両親の死」はひとつ重要な要素としました。原作では読者の年齢層などを意識してあえて描かないようにしていたのかもしれませんが、映画ならもうちょっと間口を広げてもいいかなと。
かつて子どもだった読者は大人になっていると思いますし、そういう人たちにも訴求できるものにしたかったんです。そうすると、両親の死の克服というのも成長物語として盛り込めるなと。


――原作の魅力は、主人公のおっこの天真爛漫さに負うところも大きいと思います。両親の死という重たいテーマとどうバランスを取るのか、難しかったのではないでしょうか。

高坂
そうですね。試写で観ていただいた原作ファンの方に「原作のイメージと離れていませんでしたか?」とよく聞いていたんですけど、ありがたいことに「原作のイメージを壊していませんでした」と声をいただいています。
もちろん監督の僕を前に「原作とかけ離れてる」とはなかなか言えないとは思いますが(笑)。

――TVシリーズと差別化しよう、という意図はありましたか?

高坂
TVシリーズはそれこそ原作に忠実にアニメ化していると思います。各エピソードの魅力を丹念に描いているのがTVシリーズだとすると、成長という一本の軸で物語を描くのが映画という感じですね。

――おっこの成長物語を描くにあたって一番大事にされた点は?

高坂
やはり“他者との関係性”ですね。都会から田舎の温泉街に移ってという目まぐるしく環境の変化のなか、お客さんやおばあちゃんといった他者を通じて成長していく姿をしっかり描こうとしました。

春の屋のモデルは宮崎駿監督の紹介
――キャラクターデザインについてはどんなことを意識されましたか。

高坂
やっぱり原作読者の方々にアピールしたいと思ったので、挿絵を描かれた亜沙美さんの絵はかなり意識しました。ただ、原作も20年という長い年月を経て、亜沙美さん自身の絵も変化しているので、なるべく完成形に近い後半の絵に近づけています。


――昔ながらの温泉街が舞台ですけど、時代設定は現代なのでしょうか。

高坂
舞台は現代です。たとえば温泉街を走っているタクシーやリムジンはEV車(電気自動車)で、エンジン音もないし排気管も出てないです。
実は裏設定があって、あの街はある程度自給自足ができていて、地熱発電があり、山の上の高原では野菜も作り、牧畜もしている。それで観光資源としての温泉もあって成り立っているという。

――具体的な街のモデルはあるんですか。

高坂
令丈さんが原作を書くうえで有馬温泉をモデルにしたと伺ったので、有馬温泉に取材に行きました。まるっきり同じではないですけど、地形はだいたい模しています。設定上は伊豆辺りなので、有馬温泉に海を足したという感じですね。

――おっこが暮らすことになる旅館「春の屋」にもモデルがあるんでしょうか。

高坂
春の屋は、京都にあるとある老舗の旅館がモデルになっています。そこの若女将さんが茶道をやっていらして、所作がとても美しいんです。細かい気配りなんかもすごく行き届いていて圧倒されましたね。
僕らは泊まりもせず日帰りで取材に行ったんですが、帰りにお土産をくれたんです。ちゃんと人数分に分けられるように小分け用の袋も入れてくれて。
あと水撒きをする際に、玄関に置いてあるお客さんの靴のヒモが濡れないように、ヒモを靴の上にあげてあったりするんです。


――すごく細かいとこまで気がつくんですね。

高坂
実はこの旅館、宮崎(駿)さんから「良かった」という話を聞いていたんです。宮崎さんがピクサーの(ジョン・)ラセターを連れて行って、ラセターもすごく感動していたそうです。
ラセターはあぐらをかけないから、食事の膳の下に足を伸ばしていたらしいのですが、その足にタオルをかけてくれたりとか。
それですっかりラセターも好きになったということで、それは是非行かなきゃと。

――日本のおもてなしの究極形が体験できるところなんですね。

高坂
あと能登半島にある“日本一のおもてなし旅館”と言われるところ旅館がありまして、その女将さんが書いている本を何冊か読んで取り入れています。作中で、神田あかねに対して行う陰膳(※)はその本を参考にしました。

(注:旅などに出た人の無事を祈って、留守宅を守る家族が不在者のために供える食膳のこと)

――女将独特の所作をアニメーションに起こす時に気をつけたことはありますか。

高坂
レイアウトを起こす時に、「畳のヘリは踏まないように」「部屋に入る時は床の間にお尻を向けて入らない」「客人を迎える時には真正面からお辞儀しない」など細いところを注意しました。あと所作ではないですが、和のルールとして「床の間に対して畳を直角にひかない」など。

それから女将がお辞儀する際、相手の正面ではなく斜めで迎えるようですね。だから劇中でおっこが最初にお客さんを迎える際に、ウリ坊から「はよどけや!」と言われるんですけど、あのシーンはそういう意味なんです。
他にも畳のヘリをふまないために「横は3歩、縦が5歩から6歩で歩く」と決まっていて、そのあたりは劇中でも意識しました。


――かなり細かい所作やルールまでおさえていたんですね。あと作画面では“着物”の描き方は難しかったのでは?

高坂
着物は『風立ちぬ』でさんざん描いていたので慣れてはいましたが、難しいのは「袖」です。
袖を曲げた時の裾の折り返し方とか、腰の位置や体型が分かりづらいので、絵面だけで見るとやたら胴が長すぎるように見えたりなど、難しいポイントが多々あります。

――最後にあらためて本作の見どころをお願いします。

高坂
今の世の中は大きなパラダイムシフトを迎えている時期だと思うんです。世の中が激しく移り変わっていく時に、本作のような伝統的なものを見るとホッとするんじゃないかなと思うんです。
また、おっこをはじめとするキャラクターは、原作の絵を踏襲しつつも、かなり“可愛く”を意識しました。アニメならではのおっこの活躍をぜひご覧いただきたいです。

(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

アニメ!アニメ! 杉本穂高

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