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わずか1.4度でも「きつい坂」 上り下りが苦手な鉄道の苦労と工夫

9/22(土) 11:11配信

乗りものニュース

箱根の4.6度の勾配は「規格外」

 鉄道は、基本的に鉄の車輪が鉄のレールの上を走りますが、そのとき車輪とレールが接している面積は直径1cm程度の楕円ほどしかありません。自動車の、はがき1枚分ほどの接触面積と比べると微々たるもので、摩擦力も小さくなってしまいます。

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 摩擦力が小さいと、モーターの力を大きくして力任せに登坂しようとしても力がレールに伝わらず空転してしまいます。そのため急な勾配は鉄道にとって難所となります。

 日本の鉄道は原則として1000m進むと25mの高さを上る25‰(パーミル)を限度とし、それよりきつい勾配はあくまでもやむを得ない区間として設計されていました。25‰は角度にすると約1.4度です。分度器で見ると1.4度はほとんど平らのように感じるかもしれませんが、鉄道にとってはこの程度の勾配でも距離があると十分「難所」となるのです。

 ちなみに箱根登山鉄道は、1000m進むと80m登坂する80‰という急勾配を進みますが、これを角度に直すと約4.6度。「こんな坂で急勾配?」と思ってしまいますが、鉄道にとっては「規格外の急勾配」です。

 これ以上の勾配となると、2本のレールのあいだにギザギザした特殊な「ラックレール」を敷いて車両の歯車とかみ合わせて登坂する方式や、山上に動力を配置してロープで車両を上げ下げするケーブルカーのような方式を採用せざるを得ませんが、速度や輸送力は通常の鉄道に比べて小さくなってしまいます。

角度は小さくても距離が長いと…

 鉄道は急勾配に弱いですが、緩い勾配でも距離が長いとやはり問題が発生します。

 北陸新幹線の高崎~軽井沢間は30‰(約1.7度)の勾配が30km以上も続きます。高速運転に特化した新幹線は在来線以上に勾配が苦手で、坂の途中の安中榛名駅を発車しても、軽井沢駅に向けては平坦線(平坦な区間)のようには加速できず、速度も170km/hほどまでしか出ません。

 安中榛名駅を通過する列車は、その前の地点から助走をつけて最高速度まで加速し、勢いをつけて碓氷峠の長い勾配に挑みます。それでも登坂中に速度は徐々に落ちていきます。

 このように鉄道では、勾配を極力避けて線路を敷くのがセオリーですが、1km未満のごく短い区間を高性能な電車で上り切ることを前提とするならば、建設費との兼ね合いで急勾配とするケースが大都市を中心に多く見られます。

 たとえば都電荒川線の王子駅前~飛鳥山間には、国鉄時代に難所といわれた碓氷峠と同じ66.7‰(約3.8度)の急勾配がありますが、その長さ自体は数百mしかなく、さらにスピードを出す必要のない1両の路面電車なので特別な装備なしで行き来しています。

 国鉄・JRではかつて、客車列車や貨物列車のように勾配に弱い車両が走っていたために急勾配を極力避けて線路を建設してきましたが、現代は馬力のある電車が中心であるため、神田駅付近の上野東京ラインのように電車しか走らない線区ならば急勾配の線路を建設することもあります。

 これが地下鉄となるとさらに顕著で、ほかの地下路線や埋没したケーブル・水道管などを避けるため、新しい路線ほど急カーブ、急勾配が連続する傾向にあります。都営大江戸線は勾配に強いリニア地下鉄の特性を活かして、最大55‰(約3.1度)という勾配を上り下りしています。

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