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稲穂健市さん著書「こうして知財は炎上する…」パクリ騒動、便乗商法騒動…その本質教えます

9/25(火) 13:02配信

スポーツ報知

 特許権、商標権、著作権などの知的財産権を楽しく解説する、弁理士で東北大特任准教授の稲穂健市さんがこのほど「こうして知財は炎上する ビジネスに役立つ13の基礎知識」(NHK出版新書、886円)を出版した。新聞で常に話題になる便乗商法やパクリは、どこまでが「セーフ」でどこからが「アウト」なのだろうか。そんな疑問を豊富な最新事例で楽しく解説した濃厚な一冊だ。「知財」というジャンルから知られざるエンタメ性を初めて見いだした稲穂さんにインタビューした。

(甲斐 毅彦)

 平昌五輪の男子フィギュアスケートで、金メダルを獲得した羽生結弦は、なぜお気に入りの「プーさん」を連れていなかったのか。本書はそんな問題提示から始まる。とにかく事例が興味深い。五輪の「便乗商法」はどこまで許されるのか、銘菓「白い恋人」とパクリ疑惑の「面白い恋人」との争い、「東京ばな奈」対「大阪プチバナナ」、東池袋大勝軒が出願した商標が認められなかった理由、平昌五輪の女子カーリングが生んだ流行語「そだねー」をめぐる商標権争奪戦…。

 「ネタを探しているというよりは、日々の生活の中で見たり聞いたりして気になったことを題材にしています。それを詳しく調べて、なぜこうなるのかを時系列的にひもといていくと、知財の話題というのは読む方にとって推理小説的に面白くなると思うんです」

 大学院生時代には工学研究科で「超電導」の研究をしていたという稲穂さんは、大手電気機器メーカーに就職後、特許業務に携わることになり、「知財」に興味を持ち始めた。調べれば調べるほど、発明にはユニークなものが多く、芸能人や著名人たちも数多く特許出願をしていることが判明。会社勤めをしながらも趣味が高じて「いなぽんの特許大図鑑」と題したホームページを開設。それが出版社の編集者の目に留まり、出版することになった。4作目の「すばらしき特殊特許の世界」(太田出版)では、ダウンタウンの松本人志や作家・東野圭吾による発明を図解入りで詳述。特徴は、実際に当事者たちに取材していることだ。

 「判例集に法学者が書いている解説だけでは、当事者がどう考えていたのかが伝わりにくい。取材をしないと深みが出てこないので、処女作以降、このスタイルを踏襲しています」

 新刊の「こうして知財は―」でも、音楽家の佐村河内守氏、作家の村上春樹氏など本に登場する人物や団体62件に取材を試みている。応答がない場合も少なくないが、本の密度の濃さは、そんな努力があってこそのものだ。

 「パクリ騒動などが起きた時には私も報道機関からコメントを求められることがありますが、知財の話というのは、短くまとめた断片的なものだと正しく伝わりにくい。ある程度は体系的に理解する必要があり、書籍としての発信が最適であると考えています。一般の方に限らず、弁理士などの専門家でも実務に関わっていない領域は疎いこともあります。是非本書を読んでいただき、ニュースで話題になっていることも正しく論じられるように『知財リテラシー』を身につけていただければ、と思います」

 ◇稲穂 健市(いなほ・けんいち)東京生まれ。東北大研究推進・支援機構特任准教授、弁理士、米国公認会計士。横浜国立大学大学院工学研究科博士前期課程修了後、大手電気機器メーカーを経て現職。主な著書に「楽しく学べる『知財』入門」。科学技術ジャーナリスト・稲森謙太郎名義で「すばらしき特殊特許の世界」「女子大生マイの特許ファイル」などの著書もある。

最終更新:10/23(火) 3:25
スポーツ報知