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アイルランド国境問題、なぜ英EU離脱交渉最大の難関なのか

9/26(水) 9:00配信

The Guardian

【記者:Jennifer Rankin】
 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)に向けた交渉で、アイルランドがこんなにも難題になっているのはなぜだろうか。

 2人の元英首相、ジョン・メージャー(John Major)氏とトニー・ブレア(Tony Blair)氏が、英領北アイルランドで残留を訴えて注目を浴びた以外、EUからの離脱の是非を問う国民投票のキャンペーンにおいて、アイルランドが主な争点となることはなかった。だが、アイルランドと北アイルランドが約500キロにわたり国境を接していることが、今や離脱交渉において最大の障壁となっている。

 EUと英国は、北アイルランド包括和平合意「聖金曜日の合意(Good Friday Agreement)」を維持するため、厳格な国境管理(ハードボーダー)を回避することを約束している。だが、離脱交渉は2017年12月、第1段階の合意に至ったものの、どのように回避するのかについて、ほとんど進展は見られない。EUは、アイルランド問題の合意なくして、EU離脱の合意はできないと主張している。EU側は、離脱合意がなされなければ、移行期間の導入や、英国と近隣EU諸国との貿易協定の締結もできないとの理論を展開している。

■EU案

 EUは、英国のEU離脱後も、EUが英国との国境を流通する物品の管理を行える保証を得たいと考えている。EUは、管理ができなければ、米国の塩素処理した鶏肉といった物品の不正輸入や、付加価値税(VAT)のごまかしを防ぐのは不可能だと懸念している。

 EUと英国の通商関係合意は、早くても2020年以降になるとみられており、EUは「バックストップ(安全策)」と呼ばれる代替案を提示している。同案では、北アイルランドをEU関税同盟の管理下に置き、EU単一市場の規則の多くを適用し、アイルランド島で物品が自由に行き交う「共通規制地域」を設けることを盛り込んでいる。北アイルランドは、EUの製品安全規則や、動物福祉規則、VATが適用され、EU司法裁判所などのEU機関の管轄下にとどまることになる。

■英国案

 英国はEU案に断固として反対している。テリーザ・メイ(Theresa May)首相は、バックストップ案は憲法に基づく英国の統一性を脅かすものであり、これに合意する英国の首相は「絶対にいない」と指摘した。北アイルランドが英国から切り離される状況となることに激しく反発している北アイルランドの保守政党、民主統一党(Democratic Unionist party)から協力を得ているメイ首相にとって、この案は特に緊張をもたらす提案と言える。

 英政府は、将来的な通商条約を通じてアイルランド問題を解決したいと考えており、バックストップ案は英全土に適用され、期限も設けられるべきだと主張している。だが、EUはこの2点の受諾を拒否している。

 英国は関税について、二つの提案をしている。一つは、IT技術を活用した通関設備を導入するなどし、「最大限円滑に」通関手続きを行えるようにする案。もう一つは、EUに代わって英国が関税を徴収する前代未聞のパートナーシップ案。いずれの案もEUに却下されたが、メイ政権が英首相別邸チェッカーズ(Chequers)で閣僚合意した政府方針には、2案の要素が再び盛り込まれている。

■現在の状況

 EUは、バックストップ案が英国の主権を犯すものではないと、納得させたいと考えている。離脱交渉でEU側の主席交渉官を務めるミシェル・バルニエ(Michel Barnier)氏は、北アイルランドにのみ適用されている植物検疫規範や、スペインとカナリア諸島の間の関税特別措置などの先例を挙げ、事態をシンプルに見せようと試みている。バニエル氏はまた、北アイルランドに持ち込まれる物品の検査を、英国が行うのを認めることも検討しているという。またEUは、税関検査を陸の国境ではなく、港湾や空港で行うことも提案している。だが、この案に英政府は納得していない。英国にとってEUの提案は、アイリッシュ海(Irish Sea)に「受け入れがたい」国境を引くかのように映っているからだ。【翻訳編集】AFPBB News

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

最終更新:9/26(水) 9:00
The Guardian

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