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いまの中国、バブル後の日本にそっくり

9/26(水) 14:00配信

ニュースソクラ

【けいざい温故知新】停滞の“平成日本”を再演する

 米中貿易戦争は、泥仕合になってきた。リーマン危機10周年の節目の年にふっかけられた経済のケンカに、中国は怒り心頭だろう。「恩を仇で返すのか」と。

 リーマン・ブラザーズの破綻から2か月後の2008年11月に中国は4兆元(約57兆円)の景気対策を打ち出した。素早い対応で、中国経済は他国に先駆けV字型回復し、10年には2ケタ成長に復帰してGDPで日本を逆転、世界第2の経済大国に躍り出た。

 「BRICs」の名付け親であるゴールドマンサックス・アセットマネジメントのジム・オニール元会長は、リーマン危機からの脱却での中国の貢献を評価する。08年からの10年間で、中国のGDPは4.6兆ドルから約13兆ドルに3倍増、その増加分は、同期間の世界GDPの増加額の半分以上にあたると。

 中国に、米国発の経済危機から世界を救う、という利他的な動機があったかはともかく、世界が恩恵を受けたことは事実だ。ただ、4兆元対策に始まる固定資本投資主導の成長政策で、中国経済にさまざまなひずみが生じたことも否定できない。

 思い出すのは1980年代の日本。貿易・財政の双子の赤字に苦しむ米国の求めで、ドル安に誘導するプラザ合意(85年9月)に参加。ところが円高が止まらなくなり、政府・日銀は公共投資の大盤振る舞いと、5度の利下げの金融緩和で、内需振興に全力をあげた。

 やがて株や土地など資産価格が高騰。利上げの時機を探り始めた矢先に、NY市場で史上最大の暴落(ブラックマンデー、87年10月)が起きる。米国発の世界経済危機を防がねば、と89年まで過去最低の金利を維持、その間にバブルがさらに膨らみ、頂点で昭和から平成へのバトンタッチとなった。

 平成はバブル崩壊とともに始まる。元年(89年)の大納会につけた日経平均38957円の史上最高値は、いまだ更新されていない。株に続き地価バブルも崩壊、85-90年のバブル期は年5%前後だった成長率が、ガクンと落ち、日本経済は長期停滞に陥る。

 トマ・ピケティの「21世紀の資本」によれば、日本の民間資本の国民所得比は85年の約5倍が、90年には約7倍に増えた。バブルとは「壮大な投資の失敗」だった。そのツケである不良債権処理に手間取り、97、98年には山一証券、拓銀、長銀、日債銀などが破綻する金融システム危機に見舞われる。

 設備、債務、雇用の3つの過剰に苦しんだ企業は、コストカットに奔走、実質賃金が下がり、非正規雇用が増え、デフレが定着した。「もはやデフレではない」というが、日銀の2%のインフレ目標は逃げ水のごとくで、異次元緩和の出口の目途は立っていない。

 昭和末からの日本経済と、08年以降の中国経済は一部ダブって見える。80~90年代にかけての日本は、最大の貿易赤字先=経済の主敵として米国にロックオンされていた。今の中国がそうだ。

 バブル期の日本が、公共投資と民間設備投資主導で内需をてこ入れしたように、中国も投資に賭けた。中国経済専門家の津上俊哉氏は、4兆元の景気対策以来、固定資本投資の累計額は400兆元(6800兆円)を突破したと推計する。氏が指摘するように「収益性の高い投資案件は払底」しているはずだ。収益性に問題がある投資も、相当実行されただろう。

 一方で、中国の非金融部門の債務は、08年のGDPの141%が17年末の255%に膨張した。6割超が企業部門(国有企業を含む)の債務。膨大な不良債権が潜んでいて不思議はない。債務、設備、雇用の過剰に悩んでいる企業も多いはずだ。

 中国経済は、すでに“平成フェイズ”に入ったかもしれない。株は上海総合指数が15年に5166のピークをつけてから低迷、今は半値ほどだ。主要都市の住宅価格はまだ上昇中だが、いつまで続くか。

 平成日本は、人口の高齢化が急速に進んだ。生産年齢人口は95年にピークアウト、総人口も08年を峠に減り始めた。中国の生産年齢人口(中国の基準で16―59歳)は11年がピークだった。16年に「1人っ子政策」を撤回したものの出生率の回復は鈍く、日本より速く高齢化が進みそうだ。老後が心配では、消費主導の成長への切り替えは、簡単ではない。

 対米貿易戦争で輸出に急ブレーキがかかれば、それが引き金になって積年の弊が露呈し、中国経済の成長率がガクンと落ちるシナリオも、現実味を帯びてきた。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:9/26(水) 14:00
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