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トップシェア取れる「個性派事業」を積み上げる それが昭電

10/3(水) 12:10配信

ニュースソクラ

「わが経営を語る」 森川宏平昭和電工社長(1)

 素材産業が好調である。化学業界は代表的で、中でも昭和電工は18年度上期の売上高営業利益率が約17%と絶好調である。素材産業は本来、市況によって業績の振れが大きい。しかし際立って収益性を高めている企業は、これまで進めてきた脱市況産業化の経営も後押ししている。昭和電工の森川宏平社長が素材メーカーの進化形を語る。

 ――2018年12月期の業績予想(連結)は売上高9850億円、営業利益1700億円で、売上高は前期比約26%増、営業利益は前期の約2.2倍と大幅に伸びる見込みですね。特に黒鉛電極が柱の無機部門が営業利益の7割近くを稼ぎ出すようですが、絶好調の要因は何ですか。

 黒鉛電極が飛び抜けていいので目立ちますが、石油化学も市況がよくて、他も好調です。私どもは石油化学、化学品、エレクトロニクス、アルミニウムを含めて5つの事業区分がありまして、無機以外もみな中期経営計画通りに推移しています。

 ――電気炉向けの黒鉛電極が今いいのは市況が上がっているためで、市況が下がれば、黒鉛電極の業績は暗転しませんか。

 振れ幅を小さくすることを、我々は目指しています。それが、全ての事業が目標にしている「個性派事業」の条件の1つです。

 このため黒鉛電極については、景気の悪い時でしたが、企業買収を実施して世界でトップシェアの事業にしました。業績を安定させるには、世界でトップになることです。

 山高ければ、谷深しではない企業にしたいのです。全体の景気が悪化したとき、どのくらい耐えられるのかによって、我々が今までやってきたことの成果を示せると思います。

 ――昨年買収が完了した黒鉛電極のSGL GE(現昭和電工カーボン・ホールディング)はドイツの会社ですか。

 本社はドイツですが、工場はドイツのほかにいろいろな所にあります。世界3位だった当社は、この2位の会社を買収して、世界シェアが30%となり、トップになったわけです。

 ――黒鉛電極は参入するのが難しい事業なのですか。中国企業などが出てきそうなものですが。

 まず技術的に参入障壁が高いのです。また生産設備がかなり巨大で、投資額が大きくなり、建設するのに時間がかかります。排ガスの処理など環境対策も必要です。

 最初に原料を投入して製品ができるまで半年以上かかります。非常に気の長い作業で、各工程にノウハウがあって、そこに難しさがあります。

 さらに原料のニードルコークスにも制約があります。我々が造る高品質の電極用のニードルコークスは量が限られています。

石油精製からの副生成物のため、量がどんどん増えるわけではないのです。石炭からも造れますが、品質が劣ります。

 ――新たに参入しにくいわけですね。

 品質の悪い物なら造ろうと思えばできますが、品質のいい物はなかなかできません。電気炉に使う黒鉛電極は炭素の筒で、これに大電流をかけて加熱して鉄スクラップを溶かすのです。

 炉に入れたスクラップが当たって折れたらまずいので、強くないといけない。大きな電気炉には太い電極が要ります。太くて硬いのを造るのが非常に難しい。高級な黒鉛電極を造れるメーカーは世界で5、6社です。

 ――昭和電工の戦略の中心をなす「個性派事業」は、営業利益率10%以上、営業利益数十億円以上、市況の影響を受けにくいという3条件を満たさなければならないそうですね。

 営業利益率10%以上と市況に左右されない事業構造という2つが意味するところは、トップシェアということなんです。裏を返せば、トップシェアをとれないと、その2つの条件を満たせません。

 昔は、企業は競争しながらも、みんな仲良く利益を出せましたが、今はそうはいきません。あらゆる産業で寡占化が起きています。寡占化しないと、もうからないためで、企業はどんどん大きくなろうとしています。トップシェアをとらなければ駄目なんです。

 営業利益数十億円と営業利益率10%以上の2つの条件は、適正な市場規模を前提にしています。例えば営業利益が50億円で営業利益率が10%とすれば売上高は500億円となり、トップシェアが25%ならば市場規模は2000億円です。

 なぜ市場規模を考えるのかというと、市場規模が大きくなれば、投資額も大きくなり、それに耐えられるかどうかが問題になるからです。自社に適した市場規模であれば、会社の体力に見合った適正な投資でやっていけます。

 ――一定の市場規模を前提に3条件を満たす戦略ですと、成長に限界がありますね。そうすると新たな個性派事業をつくって全体で成長を図るわけですか。

 現在、事業部が13ありまして、このうち個性派事業の3条件を満たしているのは、黒鉛電極を含めて3つです。これを25年までに半数以上にする方針です。まずは今ある事業を、場合によってはM&A(合併・買収)も必要かもしれませんけど、自律的な成長で個性派事業にすることが1つのゴールです。

 その先は、同時並行で進めていますが、新しい事業をいくつも作っていきます。例えば、かねて研究してきたリチウムイオン電池の材料を、17年1月に事業部にしました。これで事業部が13になったのです。

 今も次に事業部になるものを育てています。それは社内から出てきていますし、社外から買ってくるのも1つのやり方です。個性派事業になり得るもので、適正な市場規模でトップシェアをとれる事業に出ようと準備しています。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:10/3(水) 12:10
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