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【花開く伝統 日台文化交流記】新たな地平へ古典融合 

10/4(木) 14:52配信

カナロコ by 神奈川新聞

 横浜能楽堂(横浜市西区)が台湾の「国光劇団」と3年を費やして制作した日台コラボレーション舞台「花開く伝統 日台の名作と新作」が9月、台湾の台北、台中市内で上演された。6月に横浜能楽堂で初披露された同公演は、台湾では現代劇場に場所を移し、新たな演出を加えて上演した。両国の芸術家たちが国境を超えて出合い、新たな感動を紡ぐ舞台裏の模様を取材した。

 日台の伝統芸能が出合った「花開く-」は、3つの演目からなる異色の舞台だ。中国の古典芸能・崑劇(こんげき)の代表作「繍襦記(しゅうじゅき)」から幕を開け、日本舞踊、そして日台の新作「繍襦夢(しゅうじゅむ)」の上演に続く。

 「繍襦夢」は、「繍襦記」を下敷きに新たにストーリーを構築。日本の常磐津の三味線奏者・常磐津文字兵衛が音楽監督を務め、崑劇の役者たちは日本舞踊の体の動きも取り入れるなど、日台の伝統芸能が継承されてきた文化を守りながら互いの色を混ぜ合わせ、新たな地平に作品を完成させた。

 「日本では台湾は旅行先として人気だけれど、台湾と日本の伝統文化を融合することで、互いに知らない多くの発見がまだまだあるはず」と、企画した横浜能楽堂館長の中村雅之は語る。

 「花開く-」は日台の古典芸能が、時を超えて、現代劇と遭遇する“場”でもあった。同公演は、台湾の現代劇シーンを牽引(けんいん)する演出家・王嘉明が演出を担当。横浜公演は能楽堂で、台湾公演では現代劇の空間に上演場所を移し、それぞれの場の特徴を生かした演出方法を取った。

 「繍襦夢」の舞台では、能楽堂の橋掛りからイメージした花道を左右と奥に計3本設置し、現代劇場ならではの奥行きのある空間をつくり出した。また、舞台の上から小道具の雪を降らせるなど、能楽堂では難しい演出も取り入れた。中村は「能楽堂と現代劇場、同じ作品でも空間の違いによって作品の見え方が変化するのは、一つの発見だった」と振り返る。

 一方、台湾での初演を迎えるまでには、さまざまな感覚の違いも乗り越えなければならなかった。例えば、幕の上げ下げのタイミングや、照明の色、音量など、微妙な感覚の違いがあり、何度もリハーサルを重ねて舞台をつくり上げていった。

 台中での公演を鑑賞した長唄三味線の人間国宝・今藤政太郎は、「伝統は洗練されていくと同時に、形骸化もしていくもの。今、伝統芸能は熟しすぎて木から落ちそうな状態。けれど、国境を超えた新たな出合いが刺激となって、芸術を救うはずです」と語り、能楽堂の取り組みに期待を寄せる。

 また、観劇した台湾人の女性(38)は「日本の三味線で、中国の物語を歌い始めるコラボレーションにとても感動しました。日台の古典分野の合同制作作品がもっと見たいです。次は『山月記』を上演してほしい」と話し、これからのさらなる文化交流に思いをはせていた。

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