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芸能人化する高校球児たち 専門家が指摘する、アスリートのリスクマネジメントの重要性

2018/10/7(日) 11:04配信

BuzzFeed Japan

TwitterやInstagramなどのSNSでは、気軽にアスリート(スポーツ選手)の練習風景やプライベートを垣間見ることができる。一方で、その投稿が「炎上」するなど、注目度が高いあまり、ネガティブな反応を引き起こすこともある。

そんな中、2018年夏の甲子園での活躍で一躍、時の人となった金足農業高校(秋田)の吉田輝星投手が、決勝戦の翌日にTwitterを開設。フォロワー数は一時8万人を超えたが、すぐにアカウントが削除される、という経緯があった。

このような事態を受け「浮足立っていて危ない」として、金足農野球部関係者から、ソーシャルメディア・リテラシーを含むアスリートのリスクマネジメント全般について、選手に向けた研修を任された人がいる。

それが株式会社ホープスの代表・坂井伸一郎さんだ。坂井さんは2013年に同社の代表に就任。「アスリートに教育を」というテーマの元、研修やコンサルティングをプロデュースする、裏方として「知る人ぞ知る」存在。

坂井さんのプロデュースする研修やコンサルティングに参加するのは、読売ジャイアンツ、ヤクルトスワローズ、西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズなどプロ野球球団や日本陸上競技連盟などのスポーツ競技団体の所属選手で、年間のべ2000人にのぼる。

昨今、アスリートが関係した不祥事が続発している。坂井さんは「アスリートに向けた研修の重要性の高まり」を指摘するが、それは単に、不祥事へのリスクマネジメントに留まるものではない、という。本人に話を聞いた。【BuzzFeed Japan News / 朽木誠一郎】

「SNS禁止」ではない

坂井さんに金足農の研修を依頼したのは、長谷川寿(ひとし)さん。甲子園で清原・桑田に金足農が敗北したときのキャプテンだ。

前述したSNSを巡る一連の騒ぎや、学校や最寄駅にまで押しかけるファン、さらに所属も名乗らず選手に突撃取材をする記者やメディアを見て、「選手たちが突如として芸能人のように扱われ、危ない」と感じたという。

そこで、長谷川さんがプロ球団に所属する後輩に、選手へのリスクマネジメント教育について問い合わせたところ、その球団が選手研修のプロデュースを依頼している坂井さんが紹介された。

金足農のメンバーへの研修は全部で3回。これまでに2回、おこなったという。直近で第2回のテーマは、まさに「SNSの怖さ、使い方」だった。

しかし、坂井さんが伝えるのは「アスリートはとにかくリスクを避けるべき」ということではない。これではアスリートは思考停止に陥り、競技力にもつながる「考える力」を奪うことにもなりかねないから、というのがその理由だ。

「SNSは好例ですが、何だって良い面と悪い面の両面がある。ニュートラルなものです。大事なのはリスクをしっかり把握した上で、アスリート自らが考え、それらにどう向き合うかを自ら決めることではないでしょうか」

坂井さんはSNSを自分で運用できる「自分のメディア」と表現する。しかし、有力な選手であれば、自分のメディアだけでなく、マスメディアなど「自分以外のメディア」に取り上げてもらうこともできる。

金足農の研修でも、坂井さんは「自分で自由にできるメディアがすでに手のひらの中にあること」を前提に、「自分の価値を高めつつ、下げないための工夫を」と伝えたという。

「例えば、自分のSNSで情報発信するより、マスメディアやファンの口コミから発信してもらったほうがより多くの人に届いたり、説得力が増すこともあります」

「そのためには、どんなことをすると好印象を持って取り上げてもらえるのか。逆に、自分の価値を下げることにつながり、やってはいけないことはなにか、などについて学んでいただきました」

具体的には、大切にするべきなのは「ファンを大切にする姿を見せること」や「練習時間や試合などで自分にできる限りの努力を日々、継続すること」。

一方、「音楽を聴きながらファンの前を素通り」したり、「自分の専門外のことに対して偏った視点や一面的なものの見方で発言」したりすることは望ましくない、という。

90分という、高校生にはやや長い研修時間にもかかわらず、「居眠りする選手はおらず、多くの選手がノートやメモ帳に真剣に内容を書き留めて」いた。

「一部の選手は研修終了後も、私や私がアサインした講師を囲み、具体的な質問をしてくれるなど、熱意を感じました。数名は東京に戻る私たちに、秋田駅まで付き添ってくれるなど、好奇心と向上心にあふれた選手ばかりでしたよ」

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最終更新:2018/10/7(日) 11:04
BuzzFeed Japan

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