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「オプジーボ」の効果があるのは2割程度 “夢の薬”の現実と課題

10/10(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 京大・本庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞の受賞で、これまで以上に脚光を浴びている免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」。あらためて、がん治療における“夢の薬”とばかりに騒がれているが、実はまだまだ課題も多い。

 現在、免疫チェックポイント阻害薬は5種類が認可されている。その中で、オプジーボは「抗PD―1抗体薬」という種類にあたる。

 ヒトの免疫細胞は、体内に生じたがん細胞を異物として攻撃し、排除しようとする。しかし、がん細胞は表面に「PD―L1」といわれるタンパク質を出して抵抗。PD―L1をPD―1に結合させ、ヒトの免疫細胞の働きにブレーキをかけるのだ。

 抗PD―1抗体薬は、がん細胞が出すPD―L1の代わりに免疫細胞のPD―1にくっついてPD―L1とPD―1との結合を阻害し、免疫細胞の攻撃力を高めてがん細胞を排除する。直接、がん細胞を攻撃する従来の抗がん剤とはまったく違う仕組みの薬といえる。現在は、悪性黒色腫、肺がん、腎がん、頭頚部がん、胃がんなど7種類のがんに使われている。

 細胞を直接攻撃しないため副作用が比較的少なく、条件が揃っている患者には劇的な効果が表れるケースもある。「有望な薬なのは間違いないが、まだよくわかっていない点も多い」と、岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏(薬剤師)はこう続ける。

「オプジーボはがん細胞が出すPD―L1の働きを阻害するので、PD―L1が多く発現しているケースの方がより有効だと考えられます。しかし、実際はPD―L1が多く発現しているのに効かなかったり、それほど発現していない患者なのに効果が認められる場合もある。つまり、どんな条件の人に効くのか、なぜ効果があるのかがはっきりわかっていないのが現状です。ヒトの免疫システムはPD―1/PD―L1以外にいくつもあるので、別の免疫システムに作用していることも考えられます。そのため、効果があるのは2割程度ですし、まったく効かないケースもあります」

■予期せぬ副作用も報告されている

 どんな場合に効くのかがはっきりしていないとなれば、どんな人に副作用が出るのかもわからないということになる。

「それほど多いわけではありませんが、これまで、間質性肺炎、1型糖尿病、重症筋無力症、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症といった予期せぬ重篤な副作用が報告されています。免疫システムに働きかける薬なので、そうした自己免疫疾患が副作用として表れると考えられていますが、どんなタイプの患者に副作用が起こりやすいのかについてもはっきりしていないのです」

 近年の抗がん剤治療は、まず遺伝子検査などを行って、効果がある薬を選択して投与するのが一般的だ。

 免疫チェックポイント阻害薬も事前に遺伝子検査が行われているが、実際は使ってみなければ効くかどうかはわからないし、思わぬ副作用が出るかもしれない。過剰に期待するのは禁物だ。

 また、1瓶(100ミリグラム)の価格が17万4000円(11月~)とまだ高額なうえ、投与が始まったらやめ時がわからないという問題もある。

「オプジーボが保険診療で投与できるのは、手術が困難、化学療法の後に悪化、進行性、再発といった条件の患者に限られ、“最後の切り札”に近い状態で使われます。そのため、薬の効果がほとんどなかったり、徐々に効果が弱くなった場合でも、患者も家族も『やめたくない』と希望するケースがほとんどです。医療者側もなかなか中止を決断できません。あまり効果がないのに超高額な医療費を費やすことになり、保険制度の破綻リスクが加速するのではないかという声も上がっています」

 本庶氏がノーベル賞に選ばれた直後から、医療機関には「自分もオプジーボを使いたい」というがん患者の問い合わせが殺到しているという。やみくもに飛び付く前に、オプジーボの現状をしっかり知っておきたい。