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次の医学賞候補が開発 15人中7人のがんが消えた光免疫療法とは

10/12(金) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 今年のノーベル生理学・医学賞が、京大の本庶佑特別教授(76)に決まったことで、早くも次の医学賞レースに注目が集まっている。そのトップランナーと目されているのが、米国在住の日本人という。はたしてどんな治療法を研究しているのか――。

 その研究が一気にクローズアップされたのは、今から6年前、米国のオバマ前大統領の一般教書演説だった。

 オバマは、健康な細胞に触れずにがん細胞だけを殺す画期的な治療法を「米国の偉大な研究成果」と世界に猛アピール。それが「がんの光免疫療法」で、その開発者こそ、米国立がん研究所の主任研究員、小林久隆医師だ。

 この治療法、もうすぐ臨床現場で使われるようになる。2015年にスタートした米国の後を追うように日本でも今年3月、国立がん研究センター東病院で臨床試験が始まっている。日米ともに他の治療法ではうまくいかなかった再発頭頚部がんの患者が対象だ。

 先行して行われた米国のケースは、一部データが公表されている。それがとにかくすごい。対象15人のうち14人は、腫瘍の大きさが30%以上縮小し、7人は腫瘍が完全に消えたのだ。繰り返しになるが、対象患者は他の治療法が効かずに再発した人ばかりである。

 この治療のベースとなったマウスでの研究結果は2011年に米科学誌「ネイチャー・メディシン」で発表された。がんを患ったマウスは、8割が完治したばかりか、副作用ゼロ。驚愕の成果を受けて、NIH(国立衛生研究所)がホワイトハウスに報告したことで、発表からわずか3カ月で一般教書演説のテーマになる。

 小林医師の計画では、頭頚部がんの次は、肺がんや大腸がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどでの応用が検討されている。全身のがんの8~9割が光免疫療法でカバーされるという。

■米ベンチャーに楽天・三木谷会長が支援

 まさに“夢の治療法”を米国が見放すことはなく、治療の実用化は米ベンチャーのアスピリアン・セラピューティクス社が担当する。そこに億単位の支援を行っているのが、楽天の三木谷浩史会長だ。企業にとっては“ドル箱”で、小林医師の計画通りなら、資金回収は秒読みか。

 関西の名門・灘高から京大医学部に進学。1987年に卒業すると、放射線科医としてがん患者を診察するようになった。手術は肉体的な負担が重く、放射線や抗がん剤は少なからず副作用がある。そんなことから、「がん細胞だけを攻撃する治療法」を考えたという。

 難しい仕組みを簡単に説明するとこうだ。抗体の中には、がん細胞にだけ結合するものがあり、そんな抗体に近赤外光線の光で化学反応を起こす物質をつけ、注射で体内に注入。抗体ががん細胞に結合したタイミングを見計らって光を当てると、化学反応による熱でがんの細胞膜が破壊され、がん細胞だけを選択的に死滅させる可能性が高いという。

 東大医学部付属病院放射線科准教授の中川恵一氏が言う。

「米国での治験が始まる前は、計画通りに進むのか半信半疑でしたが、その後の報告を読むと、期待値は高そうです。治験が終わって実際の臨床現場で使われるようになると、頭頚部がんや膵臓がんなど体の奥にあるがんでは、手術と光免疫療法を組み合わせた治療法はより効果的でしょう」

 実用化を待とう。