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<松橋事件>熊本地裁で再審開始へ 「白鳥決定」後15件目

10/12(金) 20:07配信

毎日新聞

 ◇最高裁が決定 宮田さんの殺人罪、無罪の公算大

 熊本県宇城(うき)市=旧松橋(まつばせ)町=で1985年に男性(当時59歳)が刺殺された「松橋事件」を巡り、殺人罪で懲役13年が確定して服役した宮田浩喜さん(85)の再審請求に対し、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は10日付で検察側の特別抗告を棄却する決定を出した。宮田さんの再審開始が確定し今後、熊本地裁で再審公判が開かれる。殺人罪については無罪となる公算が大きい。

 小法廷は検察側の特別抗告について「(憲法違反や判例違反などの)抗告理由に当たらない」とだけ指摘し、詳細な理由は示さなかった。検察官出身の三浦守判事を含め、裁判官4人全員一致の意見。殺人事件の再審確定は、最高裁が再審開始基準を示した75年の「白鳥決定」以降で15件目とみられ、最近では大阪市東住吉区の女児焼死火災で起訴された母親ら2人(無罪確定)の再審が15年に確定して以来となる。

 宮田さんは1審途中から否認して無実を主張しており、最大の争点は宮田さんの捜査段階の自白が信用できるかどうかだった。確定判決は「シャツの左袖を切り取った布切れを小刀の柄に巻いて被害者を刺殺し、その後、布切れは燃やした」などとする自白について「犯行を具体的かつ詳細に述べている」と信用性を認めた。その上で、宮田さんが男性宅で飲食中に口論になり、自宅から小刀を持ち出して男性を刺殺した--と認定していた。

 宮田さんは12年に再審請求。弁護団は、判決確定後に熊本地検で証拠を閲覧した際に見つかったシャツ片などを証拠提出し、自白は誤りだと主張した。

 熊本地裁は16年、このシャツ片や、被害者の傷と小刀の形状が一致しないとする弁護側提出の鑑定を新証拠と認めて「自白の重要部分と客観的事実が矛盾する疑いが生じ、自白のみで有罪認定を維持できなくなった」として再審開始を決定。福岡高裁も「捜査官に迎合して事実ではない供述をした可能性がある」として17年に支持していた。これに対して検察側は、新証拠の解釈が従来の判例に違反するとして特別抗告していた。【伊藤直孝】

 三角恒(こう)主任弁護人の話 我々の主張が認められて良かった。再審公判は速やかに終結してほしい。

 落合義和・最高検刑事部長 決定を厳粛に受け止め、再審公判において適切に対処したい。

 ◇松橋事件

 1985年1月8日、熊本県旧松橋町の民家で、刺殺された男性(当時59歳)の遺体が見つかり、将棋仲間だった宮田浩喜さんが殺人容疑で逮捕、起訴された。熊本地裁は86年、殺人罪と銃刀法違反などで懲役13年を言い渡し、90年に最高裁で確定。宮田さんは99年に出所したが、認知症の症状があり、2012年に成年後見人の弁護士が熊本地裁に再審請求した。

 ◇松橋事件の主な経過

1985年 1月 旧松橋町で男性の遺体が見つかる

         熊本県警が宮田さんを殺人容疑で逮捕

  86年12月 熊本地裁が懲役13年の有罪判決

  88年 6月 福岡高裁が控訴棄却

  90年 1月 最高裁が上告棄却。2月に判決確定

  97年    シャツ片が弁護側の証拠閲覧で見つかる

  99年 3月 宮田さんが仮出所

2012年 3月 宮田さんの成年後見人が再審請求

  16年 6月 熊本地裁が再審開始決定

  17年11月 福岡高裁も再審開始を支持

  18年10月 最高裁が検察側の特別抗告を棄却。再審開始が確定

最終更新:10/12(金) 21:11
毎日新聞