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生かされなかった教訓 猛獣飼育対策、動物園任せ 鹿児島トラ襲撃死亡事故

10/12(金) 12:23配信

産経新聞

 鹿児島市の動物公園で飼育員がホワイトタイガーに襲われて死亡した事故で、改めて猛獣の飼育現場での対策が問われている。京都市動物園(京都市)では10年前、トラに襲われた飼育員が死亡する事故が発生。再発防止に取り組み、注意喚起もなされてきたが、対策は各園の状況に委ねられているのが現状だ。再び起きた悲劇を防ぐ手立てはなかったのか。

 ■なぜトラと同室?

 鹿児島市の市平川動物公園での事故は、ホワイトタイガーを展示スペース裏の寝室に移動させ、掃除する時間帯に発生。死亡した飼育員の古庄晃さん(40)が発見されたのは8日午後5時の閉園直後だった。

 展示スペースと寝室の間には動物用の通路がある。両端にはそれぞれ扉があり、清掃の際には扉を開閉させて猛獣を移動させ、展示スペース内の安全を確保する必要があった。

 マニュアルでは飼育員と猛獣は同じ空間に入らないことになっていたが、古庄さんは発見時、ホワイトタイガーと同じ展示スペース内にいた。通路につながる扉は閉ざされていた。

 ■「人はミスを起こすとの視点を」

 「非常に痛ましい気持ちになった」。京都市動物園の坂本英房副園長(58)は肩を落とした。同園では平成20年6月、飼育員=当時(40)=がアムールトラに襲われて死亡する事故があった。飼育員が展示スペースを清掃しようとした際、トラを閉じこめる隣の部屋と通路を仕切るシャッターを閉め忘れ、襲われたとみられている。

 通路の仕切りの開閉状態など鹿児島の事故とは状況が異なるが、「経験豊富な職員が犠牲になった点は同じ。人はミスを起こすとの視点が必要だと改めて感じた」(坂本副園長)。

 京都市動物園は事故の原因となったシャッターについて、閉じていなければ、飼育員が掃除などで中に入るための扉が開かない構造に変えるなどの再発防止策に取り組んだ。事故後、他の動物園関係者の視察を受けたり、安全への考えや対策を外部に発信したりしていた。それでも痛ましい事故が再び起きた。「教訓が生かせず悔しい」。坂本副園長は唇をかんだ。 

 ■担当人数の明確な基準なし

 猛獣の飼育をめぐっては、安全確保の観点から複数の職員が同時に作業に当たることもある。

 ホワイトタイガーを飼育する大牟田市動物園(福岡県大牟田市)では過去の事故を教訓に、清掃などの対応は必ず2人1組で行っている。小諸市動物園(長野県小諸市)で昨年2月、飼育員がライオンにかまれて重傷を負った事故では、ライオンの移動などを職員1人で判断していた。その後の有識者による検証では、複数の職員による対応が必要だったとの再発防止策が出された。

 鹿児島市平川動物公園では作業を1人で担っており、今後見直される可能性が高い。

 一方、猛獣の飼育担当の人数に関する基準はなく、各園の状況に応じて判断されているのが実情だ。

 大阪市の天王寺動物園はこうした作業を原則1人で行う。複数が同時に対応すれば全体の作業時間が長引き、開園時間などに影響を及ぼす可能性があり、担当者は「まず職員それぞれの安全意識の向上が重要だ」と述べた。

最終更新:10/12(金) 12:23
産経新聞