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夏の「睡眠負債」…秋には返済を ため込むと生活習慣病リスク

10/12(金) 13:23配信

産経新聞

  ■改善の鍵は「リズム・質・量」

 記録的猛暑で、寝苦しい夜が続いた今年の夏。睡眠不足が借金のように積み重なる「睡眠負債」をため込むと、「ソーシャル・ジェットラグ」を引き起こし、肥満や高血圧などのリスクが高まるとされている。秋本番に取り組みたい負債の“返済”方法を紹介する。

 ◆5人に1人

 「夕方になると居眠りしがち」。神奈川県藤沢市の男性会社員(40)は睡眠不足を自覚している。晩酌の後、深夜1時に就寝。起床は朝6時で睡眠時間は5時間ほど。その分、休日は朝9時まで3時間ほど“寝だめ”をしている。「でも、疲れは取れない」

 厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成29年)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男女ともに40代で最も高く、それぞれ48・5%、52・4%。睡眠で十分に休養が取れていない割合も男女合わせて20・2%に上る。

 ◆ストレスの特効薬

 「日本人は眠れないくらいでは死なないと思っているが、大きな誤解だ」。昭和56年に日本初の睡眠障害専門外来を開設した睡眠医学の第一人者、久留米大の内村直尚教授(精神医学)は警鐘を鳴らす。

 寝不足や寝過ぎは肥満を誘発する。体内で、食欲を抑える「レプチン」というホルモンの血中濃度が減り、逆に「グレリン」という食欲を促すホルモンの濃度が高まるのだという。その結果、必要以上に食べてしまうことになる。肥満のほかにも、高血圧、心臓病、脳卒中、鬱病などにかかるリスクも高まる。

 7~8時間が適度な睡眠とされ、心身の病気リスクを軽減する効果がある。内村教授は「睡眠中はストレスから解放され、心や脳が十分に休息を取れる。睡眠はストレスに対する最高の特効薬だ」と話している。

 「睡眠習慣を改善するには、睡眠の3要素である『リズム』『質』『量』から考えるのが良い」

 久留米大の内村直尚教授らと8月、睡眠の重要性を訴える「目覚め方改革プロジェクト」を立ち上げた明治薬科大の駒田陽子准教授(睡眠学)はこう提言する。

 人間の体には体内時計が備わっている。朝日を浴びると体内時計から信号が出て、睡眠を促す「メラトニン」というホルモンの分泌が止まり、体が活動的になる。十数時間後には分泌が再び増え、眠気を感じるようになる。しかし、休日の長寝などが、この体内時計が作り出す睡眠の「リズム」を崩してしまう。

 駒田准教授は「光を浴びない生活を続けると、体内時計が少しずつ乱れ、メラトニンが必要なタイミングで分泌されず、夜眠くなくなってしまう」と指摘する。

 その結果、夜なのに体は起きていて寝付けなくなったり、朝なのに体が眠っていて起きられなかったりする「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれる時差ぼけのような状態を引き起こす。それが原因で、心身の病気や、集中力の低下に伴う仕事の効率低下などを招いてしまう。

 「朝日が差すうちに起きて、意識的に窓辺などの明るい場所で過ごし、“寝起きのリズム”を維持することが大切」(駒田准教授)

 そのうえで7~8時間の「量」を確保する。それでも「休日はもっと寝たい」と強く感じる場合は、体が睡眠を求めているサイン。30分から1時間ほど早く寝たり、遅く起きたりして、リズムを崩さない程度に修正を行うと良いそうだ。

 一方で、睡眠の「質」を保つため、生活に適度な運動を取り入れる▽深酒は控える▽ゆったり湯船につかりリフレッシュする▽10~20分程度の昼寝をする-などを習慣づけると、より上質な睡眠につなげられる。(玉崎栄次)

最終更新:10/12(金) 13:23
産経新聞