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虐待死の6割超が0歳児 出産前から福祉へつなぐ必要

10/12(金) 13:27配信

産経新聞

 ■情報、専門機関の紹介が命綱

 厚生労働省が8月に発表した虐待死の検証結果によると、心中以外の理由で虐待死した子供(18歳未満)は平成28年度に49人。うち32人が0歳児で6割超を占めた。当事者の母親自身が若年、貧困という例も少なくなく、早期の妊娠相談などを通して出産前から確実に福祉につなぐ方策が求められている。

 0歳で虐待死した32人の月齢を見ると、最多は0カ月の16人。そのうち、生まれたその日の死亡が11人を占めた。11人の状況は、10代~20代の若い母親が育児放棄(ネグレクト)で死なせているケースが多い。自宅のトイレで出産して放置したり、遺棄したりする例もある。

 しかし、子供を守るために、こうした母親の情報をどう事前にキャッチするかは難題だ。死亡した11人は、いずれのケースも母親が妊婦健診を受けておらず母子健康手帳も持っていなかった。医療や福祉、行政と接点のないまま、出産に至っている状況が浮かび上がる。

 妊娠に不安や葛藤を抱える人向けの相談窓口は全国にある。都道府県や政令市、民間が運営するものなどさまざまだ。一般社団法人「にんしんSOS東京」はそのひとつ。助産師の中島かおりさんが、平成27年に仲間と7人で始めた。虐待死は大半が0カ月の新生児だと知り、「生まれたその日に亡くなる命」も「乳児を遺棄せざるを得なかった女性」もなくしたいと思ったのがきっかけだ。

 日本財団などの助成を受け、今は22人の助産師や社会福祉士が電話やメールで相談を受ける。産むか産まないかにかかわらず、相談者に寄り添って意思決定を助け、必要なら自治体の福祉部局や女性支援の専門機関につなぐ。

 開始から3年弱で約1900人の相談を受けた。中島さんにとって衝撃だったのは、相談者の妊婦自身が虐待を受けて育った事例が目立ったこと。「妊娠すると、周囲の助けや経済力に乏しい人ほど窮地に立つのに、とりわけ必要な人に支援が届いていない。仕組みに欠陥があるのではないか」と指摘する。

 本人に「未成年」「貧困」などの要素があると、さらに支援が届きにくい。

 ある19歳の少女は、母親の再婚相手から暴力を受けて育った。児童相談所が何度も介入したが保護には至らず、知人女性宅に身を寄せた。そんなとき、別れた彼からの暴力で妊娠。「1人で解決しなければならない」と相談を寄せた。

 だが、妊婦が未成年の場合、中絶に親の同意を求める医療機関が多い。子供を産んで養子縁組に出すにも親の同意が必要。また少女の場合、義父が税制優遇を得るために少女を扶養家族にとどめたため、生活保護も受けられなかった。

 妊娠検査薬は、薬局で800円程度で購入できるが、その次に産科で確定診断を得るには、1万円弱の受診費用がかかる。確定診断と引き換えに母子健康手帳を交付する自治体もあり、手持ちのお金がないと医療とも行政とも接点を持てないままになる。

 課題に応えて、厚生労働省は31年度の概算要求に、未受診の妊婦に妊娠検査薬を提供したり、医療機関での診断費などを補助したりする予算を盛り込んだ。貧困や若年などで出産や育児に課題を抱える妊婦を対象に、支援を妊娠が分かる「前」に前倒す。保健師などの専門職が、全国70カ所の「女性健康支援センター」で相談に乗り、医療機関に同行するなど、適切な支援につなげたい考えだ。

 中島さんは、新しい施策を高く評価した上で、「ドイツには住民4万人に1人の妊娠相談員がいる。妊婦が匿名で出産し、特別養子縁組に託せる仕組みもある。子供の命を守るには、母親が安心して相談し、1人で抱えこまずに済む環境が必要」と話している。(佐藤好美)

最終更新:10/12(金) 13:27
産経新聞