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社説[菅官房長官発言]事実をゆがめ不誠実だ

10/12(金) 8:50配信

沖縄タイムス

 あえて事実と違うことを発言している真意は何なのか。沖縄の基地負担軽減を担当する菅義偉官房長官の姿勢は、不誠実ではないだろうか。

 菅氏は7日のNHKの番組で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と在沖米海兵隊のグアム移転について、「(辺野古移設が)実現すれば、米軍9千人がグアムをはじめ海外に出ていくことになっている」と発言した。辺野古の新基地建設が、グアム移転とリンクして沖縄の海兵隊の削減につながり、結果として沖縄の負担軽減になるとのロジックである。この発言には、辺野古を進める正当性を強調する狙いがある。

 菅氏は10日の記者会見でも、辺野古とグアム移転は「結果的にリンクしているのではないか」との認識を示した。普天間問題を巡り迷走し、辺野古に進展がなかった旧民主党政権時代に、米議会がグアム移転事業の予算執行を凍結した点や、その後、安倍政権になって新基地建設の作業が進んで資金凍結が解除された経緯を挙げ、そう強調した。

 事実は異なる。日米両政府は2006年在日米軍再編計画で、普天間の辺野古移設とグアム移転をリンクさせていた。しかし、辺野古の進展が見通せず、リンクに固執すれば米軍の不利益になるとの判断があり、日米両政府は12年に両者を切り離すことで合意した。現在も有効である。

 菅氏も12年合意を知らないはずはない。内閣のスポークスマンがあえてリンク論を持ち出し、辺野古への理解を引き出そうとする姿勢はこそくと言わざるを得ない。

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 事実と異なる菅氏の発言はこれだけではない。辺野古新基地建設について1999年に地元同意があったと政府方針の正当性を強調する。

 翁長雄志前知事と初めて面談した2015年4月。菅氏は「99年に当時の知事と名護市長の受け入れ同意を得て、辺野古移設を閣議決定した経緯がある」と述べ、その後も記者会見などで何度も繰り返した。

 当時、稲嶺恵一知事も岸本建男名護市長も、軍民共用の飛行場とすることなどいくつもの条件を付け、それが満たされなければ受け入れを撤回するとしていた。

 しかし、その閣議決定は、06年に辺野古にV字滑走路を造る現在の計画を日米政府で合意した後に、政府が一方的に破棄した。前提を欠いているのだから地元の「同意」のみ取り上げるのは、都合のいい捉え方というほかはない。

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 これらの菅氏の発言には、知事選で翁長氏、玉城デニー氏が当選し辺野古に反対する民意が圧倒的に示されたにもかかわらず、政府方針が誤っていないと、ダメージコントロールをする意図もあるだろう。負担軽減や地元の合意を意図的にクローズアップし、新基地建設への理解を世論の中に固定化したいとの思いも透ける。

 安倍晋三首相と菅氏は12日、玉城知事と初めて会談する。早期の会談で沖縄への丁寧な対応を世論にアピールする狙いもみえる。基地問題を巡る発言も、事実に沿って丁寧に発言してもらいたい。

最終更新:10/12(金) 9:05
沖縄タイムス