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【黄門かわら版】本好きに愛される佐川文庫

10/14(日) 7:55配信

産経新聞

 知らない土地を訪れたときは、とりあえず図書館をのぞいてみることにしている。市民の暮らしや息遣い、民度を知る一番の手がかりになるからだ。

 昨年、水戸支局に赴任して間もなく、職場に近い県立図書館を訪れた。旧県議会議事堂の重厚感に加え、充実した読書環境。ところが、入館して30分ほどで退出してしまった。

 理由はいくつかあった。館内が開放的とはいえず、やや窮屈な印象を受けた▽案内表示が小さく、目的の書庫に行きづらい▽中高生が勉強用に席を確保している。要は居心地の問題だった。以来、急な調べもの以外は足を向けなくなった。

 最近、本好きに愛される私設図書館が水戸市郊外にあることを知った。佐川文庫という。昭和59年から9年間、水戸市長を務めた故佐川一信氏の遺志を継いで3万冊の蔵書と1万枚のCDが集められた。文豪の全集やクラシックの名盤の数々…。

 佐川氏が唱えた理念の一つに「読書文化の復権」がある。普通の図書館では置いてないであろう“お宝”に胸が高鳴る。日本一の蔵書を誇る国立国会図書館でも味わえない、ぜいたくで静謐(せいひつ)な時間。図書館というより、ぜいたくなサロンの装いだ。時間が許す限り、知の空間に居たくなる。

 ここは図書館の文化発信という点でも画期的である。隣接するホールで開催されるリサイタルは、演奏者と聴衆の一体感が魅力の一つだ。「人文の水戸」の片鱗(へんりん)を垣間見た気がした。(日出間和貴)

最終更新:10/14(日) 7:55
産経新聞

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