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【かながわ美の手帖】柳原良平アートミュージアム「横浜の船と港」展

10/14(日) 7:55配信

産経新聞

 ■船舶好きも楽しめる、作品に見る街の変遷

 横浜市に3月にオープンした柳原良平アートミュージアムで、開館後初の特集展示「横浜の船と港」が開かれている。幼少から無類の「船好き」だった柳原は、船舶に関する知識に精通し、横浜港の風景とともに、その姿を緻密に描いた。展示している作品12点はいずれも、みなとみらい21地区を中心とする横浜港周辺が舞台。柳原の明るく楽しい絵柄とともに、発展を続ける地区の移り変わりも感じることができる。

 ◆忍ばせた心意気

 12点の作品は油彩、切り絵、リトグラフ(石版画)の3種。いずれも柳原が得意とした技法だという。最も古い作品は横浜・山手町に移り住んで10年ほどたった昭和48年の制作。新しいものは、84歳で亡くなる約5年前の平成22年の作品だ。

 リトグラフ「パシフィコ」が目を引く。青空を背景に、パシフィコ横浜(横浜国際平和会議場)のホテル棟(現・ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル)の白い建物が、画面の中央にそびえている。手前には横浜赤レンガ倉庫。海に5隻のタグボートが浮いている。

 パシフィコ横浜が竣工(しゅんこう)して1年ほどたった4年の作品。5年に横浜ランドマークタワーが開業する以前のためか、周囲には高い建物を描いておらず、現在の実際の風景と比べて、空の広さが際立っているように感じられる。

 5隻のタグボートには、柳原の趣向が凝らされている。同館によると、5隻はいずれも実在する別々の船会社のもので、煙突の形や模様などから見分けられるという。港湾関係者や船舶ファンも楽しめそうな作品だ。

 油彩「赤レンガ倉庫」は柳原が油彩に取り組んで間もない昭和48年の作品で、船舶ではなく倉庫が主役。倉庫を画面いっぱいに描き、壁面のレンガを一つずつ丁寧に描き込んでいる。ただ、やはり船を描かずにはいられなかったのだろうか、目線の先には、停泊する「新さくら丸」を控えめながら、登場させている。

 この船は後年、大阪商船三井船舶(現・商船三井)のクルーズ客船として改造されたが、当時は日本産業巡航見本市協会(解散)が所有し、産業見本船として日本の工業製品を乗せ、世界各地でPRしていた頃だという。世界を巡る船に柳原はどんな思いを重ねたのか、想像してみるのも面白い。

 ◆卓越した切り絵

 平成元年制作の切り絵「氷川丸とマリンタワー」は、柳原が20代の頃に「トリスおじさん」のキャラクターで見せた、切り絵の卓越した技術が見て取れる。

 人物や船舶を縮めて描き、デフォルメすることで、親しみを持たせるという柳原らしい画風。甲板には自らをイメージした2頭身のキャラクターを立たせている。青空の背景は、近づくと和紙のような模様が確認できる。

 切り貼りと着色で作られた作品だ。その緻密さや色使いが、見る者に切り絵の世界の楽しさや、奥深さを感じさせる。

 同館によると、横浜マリンタワーの「色」も注目のポイントだという。塗装が、昭和36年開館時の赤と白の帯状から、初めて白から赤へのグラデーションに塗り替えられた直後の様子を写し取っている。

 展示を企画した横浜みなと博物館館長の志沢政勝は「作品からは、地域の歴史も感じていただけるだろう。柳原は横浜のどこが好きだったのか、を感じ取れる作品を集めた。柳原の目を通して、港町としての横浜の良さも再発見してほしい」と話している。=敬称略(外崎晃彦)

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 特集展示「横浜の船と港」は柳原良平アートミュージアム(横浜市西区みなとみらい2の1の1「横浜みなと博物館」内)で12月24日まで。午前10時から午後5時(入館は午後4時45分まで)。月曜日休館(12月24日は開館)。入館料は一般400円ほか。問い合わせは同館(電)045・221・0280。

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 ◆みなとみらい21地区

 横浜市東部の臨海部に位置し、オフィスビルや商業・観光・娯楽施設が集積する約186ヘクタールの街区。昭和40年に市が再開発計画を発表、58年に着工した。開発は現在も続き、事業進捗(しんちょく)率は開発済み83%、暫定利用7%、未利用地10%(平成30年1月時点)。主な施設は横浜ランドマークタワー、パシフィコ横浜、横浜赤レンガ倉庫、よこはまコスモワールドなど。年間来街者数は約7900万人(29年)。

最終更新:10/14(日) 7:55
産経新聞