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【私のイチ押し】平塚市美術館・草薙奈津子館長 お能 「歌って踊って」、知っていてよかった

10/14(日) 7:55配信

産経新聞

 お能を見ていると、本当に退屈なんですよね。でも後ろの座席で居眠りして、遠くの方から謡(うたい)や囃子(はやし)が聞こえてくると、これが気持ちいいんです。人間ってよくしたもので、眠くても動きのある場面では、ちゃんと目が覚めてくれます。

 「高尚なご趣味で」なんて言う方がいますが、謡に仕舞って「歌って踊って」。誰でも歌や踊りは楽しいですよね? とにかく楽しいんです。それに、仕事で日本画の世界に入ってからは、「能を知っていてよかったな」とも思います。

 大学時代、たまたま観世会に入部して4年間、卒業後も20年ほど先生について習ったのですが、能は女性に向いていないと、いったんは遠ざかりました。でも、10年ほど前から、好きな方々と月に1度集まり、年に1度ある仲間うちの発表会には再び参加しています。部活の合宿でおなかから思いっきり出す発声法をたたき込まれたので、今も声は出ます。実は30代半ば頃の会で「野宮(ののみや)」の舞囃子をしたとき、先輩の観世寿夫(ひさお)さん(能楽シテ方)が地頭(じがしら)をしてくださって、ものすごく褒めてくださったんです。今までの人生で、これほどうれしかったことはありません。

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 【メモ】横浜市出身。慶応大学文学部卒業。専門は近代・現代日本画。昭和44年から平成10年まで山種美術館学芸部に勤務し、学芸部企画・普及課長となる。16年から現職。県芸術文化財団理事など多数歴任。今夏の「金魚絵師 深堀隆介展」は6万6000人超の同館歴代最多観覧者数を記録した。「『金魚』ということもありましたが、若い人の来館が多かったことが一番、うれしいです」

最終更新:10/14(日) 7:55
産経新聞