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「分からなさ」を残しているからタモリの人気は長く続く

10/14(日) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

コラム【今週グサッときた名言珍言】

「子どもから大人まで、お年寄りまで分かるような番組をやろうと思ったことは、一度もないですね。分かんないところは分かんないでいい」(タモリ/日本テレビ「newszero」10月2日放送)

 新メインキャスターの有働由美子との対談で、タモリ(73)は「見てる方に立って何かをやったりするっていうことは、ほとんどないのかもしれないね。自分が面白いから自分でやってる」と、自らのスタンスを語った。

 対する有働は、自分は全く逆で「視聴者の方が何が分からないかっていうのを考える癖みたいなのをつけてるので、自分が面白いかどうかは分からない」と言う。分からないことがあったら、視聴者が離れてしまうのではないか。だから、万人に分かるような番組をやろうと考えてやってきた、と。それを聞いてタモリが返した言葉を今週は取り上げたい。

 タモリは新人の頃、常に言われてきた言葉があるという。それは「テレビ見てる人には分かんないよ」。確かに、タモリの芸は決して分かりやすいものではない。

 たとえば、漫才コンビばかりが、もてはやされた漫才ブームの頃。今で言う「ネタ番組」に呼ばれることはあっても、ピン芸人であるタモリは添え物的な扱いだった。そんな時、タモリは何が漫才だというちょっとした反骨心もあり、ウケないのが気持ちいいという境地に至りながら「誰でもできるチック・コリア」という芸を披露していた。

 チック・コリアは高名なジャズピアニストだが普通の人は分からないだろう。その奏法をそれっぽく真似るという芸だった。そんなタモリの核をなすジャズの素養もまた、「分からなさ」からひかれた。

 子どもの頃からタモリは、音楽好きの両親の影響でさまざまな音楽を聴いて育った。だから音楽に対する“耳”には自信があった。だが、友人の家で聴いたアート・ブレイキーの一枚に衝撃を受ける。

「何がなんだかわかんない。こんなわけのわかんない音楽聞いたのははじめてで、とても癪にさわったんですね。俺にわからない音楽なんてないと思ってましたからね。それじゃあ根性入れて聞こうと」(メディアファクトリー「これでいいのだ。―赤塚不二夫対談集」00年1月14日発売)

 そこからタモリはジャズに傾倒していった。テレビも同じだ。「11PM」(日本テレビ)で、面白さが理解できない部分でスタジオで大人たちが笑っているのを見て、テレビを必死で見るようになった。

 冒頭の有働との対談でも、テレビを過度に分かりやすくしようとするのは、テレビを見ている人をバカにしていることだとタモリは言う。思えば、こんなにも長くテレビに出続けているタモリだが、タモリほど「分からなさ」を残しているタレントはなかなかいない。人間は分からないことにこそ興味を持つし、分かろうとするものなのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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