ここから本文です

停電 その時、医療現場は… 北海道地震、台風24号の教訓

10/14(日) 10:30配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 最大震度7を観測し、41人が死亡した北海道の地震から1カ月が過ぎた。地震動だけでなく直後の全域停電(ブラックアウト)によって、医療現場は混乱した。静岡県内でも台風24号により、9月30日から最大7日間停電した。電力停止が患者の命に直結する恐れがある医療現場の関係者は今回の災害をどう受け止めたか。

 厚生労働省によると、道内の医療施設の多くは自家発電によって診療を継続した。急患の受け入れや外来診療を一時中止した施設もあったが、「おおむね支障はなかった」としている。建物被害はほとんどなかったとされ、道は各施設を調査し、課題を分析する方針。

 「自家発電を使ったとしても、患者の数によってはどうなるか」。こう話すのは静岡市駿河区の静岡済生会総合病院の杉原孝幸事務部長。同病院は同区唯一の災害拠点病院で、南海トラフ地震が発生した場合、3日間で2500人が訪れると想定されている。系列の済生会小樽病院(北海道小樽市)は大手流通会社と災害時の協定を締結していたが、停電が原因で必要な物資が届かなかったといい、杉原事務部長は「想定」や「協定」の危うさを感じたという。

 災害拠点病院に対し、国が本年度中の策定を求める事業継続計画(BCP)の策定作業の最中で「全職員を巻き込み、見直しを図っていく。いま一度災害への意識を高めなければいけない」と気を引き締める。

 停電や断水の影響を受ける医療行為の一つが人工透析。3~4日透析が受けられないと命に関わる患者がいる。北海道地震では人工透析ができなくなる施設が相次ぎ、別の施設が患者を受け入れた。

 静岡県内では、県腎不全研究会が中心となり、各施設で災害対策が進む。停電や断水で治療ができない施設は、入り口に案内を出すなどして患者に対応を周知。大規模災害時には、災害派遣医療チーム(DMAT)が遠隔の受け入れ先を調整することになっている。

 ただ、県内で透析治療を受ける約1万人のうち、一部の患者は自宅で就寝時などに治療を行っているという。バッテリーがあっても停電時に冷静に対応できるかどうか。県立総合病院の森典子副院長(腎臓内科)は「在宅患者への情報提供を含めて検討が必要」と話す。その上で、災害に備えた食生活や薬の常備などを、改めて患者側に求めている。



 ■在宅患者の命 左右

 台風24号により静岡県内で起きた停電では、自宅で医療機器を使う患者も緊急対応を強いられた。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者は人工呼吸器や意思疎通のパソコンなどを使用する。日本ALS協会県支部の内山悦子支部長(浜松市中区)によると、停電が長期にわたったためバッテリーが持たず、緊急入院する患者がいた。発電機の使用に不慣れな患者家族も多かったという。内山支部長は、今回の件を受けて長期の停電の場合、主治医に連絡して入院するよう会員に通知。「電源が止まれば命を落とす。定期的に勉強会を開くなどして、備えを進める」と話した。

 東日本大震災時の計画停電などを契機に、関係機関が在宅患者に対して停電時の備えをホームページなどで発信している。医療機器の定期的なメンテナンスや、外部バッテリーの常備、緊急避難的に入院できる病院の確認-などを求めている。

静岡新聞社