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【漢字トリビア】「毒」の成り立ち物語

10/14(日) 11:53配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「毒薬」「毒素」の「毒」。女性が飾りたてたかんざしを頭に刺して正装し、祭りに奉仕する姿を描いた象形文字です。

「毒」という漢字を書き順どおりに説明すると、まず横線を一本書いたあと、それを貫く縦一本線を書き、さらに二本の横線を書いて、その下に「母」と書きます。
これは、かんざしを頭につけて正装し、祭りに奉仕する女性の姿を表した象形文字といわれています。
ちなみに「母」という字は女性が子供をひざまずいて抱く様子。
二つの点は、乳房を意味しています。
神事の合間に我が子へ授乳する母親が頭につけるかんざしは、髪をまとめて働くため、質素なものが一本あればそれで済むはず。
それなのに、彼女が頭につけているのは、じゃらじゃらと音をたてんばかりの飾りがついた派手なもの。
それはある意味、神をもてなすための「手厚い」化粧のはずなのですが、神聖な祭りの場にはふさわしくありません。
そこから転じて「毒」という漢字は、「好ましくない」「そこなう」「害する」という意味に用いられるようになったのです。

あるものが私たちに望ましい作用をもたらせばそれは「薬」となり、望まない作用をもたらしたならそれは「毒」となります。
毒と薬はさじ加減。
病に冒された部分を治療するために飲む薬は、健康な部分へ影響を及ぼす副作用を覚悟しなければなりません。
また戦争は科学技術を発展させましたが、罪のない市民の命を多く奪いました。
先人たちはその二面性を探りつつ、民族の生存を賭して、薬と毒を扱ってきたのです。

ではここで、もう一度「毒」という字を感じてみてください。

ここ数年、よく耳にするのが「毒母(どくはは)」という言葉です。
過剰な愛情を注ぎ、世話をやきながら我が子を支配する母。
我が子さえ私物のひとつ、すべては自己愛を満たすためにふるまう母。
本来、苦しみや痛みをやわらげる薬となるべき存在が、毒になることもあるのです。
「毒」という漢字の中に「母」という文字を見つけて、自らもまた誰かの毒になってはいないかと、振り返ってみることが必要かもしれません。
一方で、ほんの少しの毒が妙薬になることもあります。
ものごとがうまくいかないな、と思ったら、いい子でいることをやめて、思い切って毒を吐いてもいい。
毒をもって毒を制す強さもまた、必要です。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『字源の謎を解く』(北嶋廣敏/著 イースト新書Q)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年10月13日(土)放送より)

最終更新:10/14(日) 11:53
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