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佐藤流司の“新たな伝説“! 「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣2018」の魅力を探る

10/14(日) 11:30配信

電ファミニコゲーマー

 佐藤流司がまた“伝説”を作った。昨年の同名公演に引き続き、今年も加州清光役として90分間、ノンストップの舞台に立ったのである。その名も「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣2018」。手練れのダンサー陣を従え、赤と黒とが織りなすステージで佐藤は“刀剣男士”としてどんなパフォーマンスを魅せたのだろうか。

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 今、もっともアツいと言われるエンタメ……2.5次元ミュージカル。
 その証拠に、2017年の公演タイトル数は171本におよび、国内市場は156億円で前年比21%増と大幅な伸びを見せている(ぴあ総研調べ)。
 そんな2.5次元作品を大きく牽引しているひとつが大人気ゲームを原作としたミュージカル『刀剣乱舞』。“刀剣男士”たちが歴史を改ざんしようと企む歴史修正主義者たちと戦う本作で多大な人気を誇るのが、新撰組・沖田総司が使用していたとされる打刀、加州清光役を演じる佐藤流司だ。

 昨年、天王洲・銀河劇場にて行われた「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣2017」の16公演は即日ソールドアウト。その熱を受け、今年は公演会場も新曲4曲と上演回数も増やしてのステージ。2018年9月12日初日直前のゲネプロでは、TBS赤坂ACTシアター内がこれから始まる“伝説”を前に不思議な静けさと熱気に満たされていた。

 今回はTBS赤坂ACTシアターでの開幕を皮切りに、宮城、大阪、北海道と4都市公演を敢行し、各地で熱狂の渦を巻き起こした「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣2018」についてレポートしつつ、加州清光役・佐藤流司の魅力について撮り下ろし写真とともに語っていきたいと思う。

取材、文/上村由紀子
撮影/武田真由子

■赤と黒の世界で佐藤流司が舞い、歌う

 客席のあかりが落ち、漆黒の闇の中、効果音とともに水中の映像が映し出される。そこにダンサー陣を従え、椅子に座った状態で舞台奥より登場する加州清光役の佐藤。頭には若干大きめの軍帽、顔の半分を赤い羽根で飾られた仮面で隠し、指をパチンと鳴らす合図で映像を切り替える。

 オープニングナンバーはお馴染み「解けない魔法」だ。ジャジーなアレンジが施されたピアノ曲の中、優雅に客席に向かい一礼して、ショーのスタートを告げる。1曲目の新曲を挟み、「言の花」「Kiss for all the world」と続くなか、赤と黒に彩られたアシンメトリーなデザインの衣裳に身を包んだ加州清光と、黒を基調とし、白い手袋でアクセントをつけたダンサー陣によるパフォーマンスの迫力が劇場内を支配し、客席のボルテージもどんどん上がっていく。

 客席の熱気を受けての5曲目は、お待ちかねの「美しい悲劇」。ゲネプロでありながら、関係者、報道陣からも歓声が上がる。2017年の単騎出陣と同じく、曲の中で黒い目隠しをされ、赤い紐で手足の自由を奪われもがきながら加州清光が歌う姿に、明治という日本の夜明けの姿を見ることなく散った新撰組・沖田総司の姿が重なった。奇跡が起きないと知りながら歴史の渦に飲み込まれ若き人生を全うした沖田の想いを全身に受けて歌う加州清光……そのさまは美しく、哀しい。

■観客と共に“旅”をするステージング

 そんな精神的にも肉体的にも激しいパフォーマンスを断ち切るように6曲目の「サヨナラ」ではしっかりとした発声でバラードが歌われ、ここを区切りにステージはダンサーたちの見せ場へ。レーザー光線やスモークが多用される演出の中、ヒップホップ調の音楽に乗りながら、エネルギーあふれるプレイを見せるステージングがアツい。

 ダンサー達の熱を受け、衣裳替えで赤いふわふわのコートをまとった加州清光が再び登場し、2曲目の新曲から「Jackal」「見つめてくれるなら」「Love Story」と続いたところでプチ休憩タイム。
 上手から水を持って出てきたダンサーを軽くイジりながら息をつく。この場面、水を渡すダンサーは絶対に喋ってはいけない縛りがあると思われるのだが、それを知った上であえて簡単な質問……「いくつ?」「今日、暑いよね?」と、少しだけ意地悪な表情で答えられない問いをぶつける遊び心がずるい。

 その遊び心がさらにヒートアップしたのか、赤いコートを脱ぎ捨て、客席に降りて歌うのは3曲目の新曲だ。ステージに戻った後は休む間もなくインナー姿で和太鼓演奏のパフォーマンス……ときにひとりで3面の和太鼓を叩き、汗を飛び散らせながらダンサー陣とも絡みつつ、昨年よりもパワーアップした演奏を仕切る。

 終幕に向かってラストスパートに入った舞台では、加州清光が出陣のときに着用するお馴染みの衣装で「勝利の旗」「戦うモノの鎮魂歌」「選ばれぬ者」「ひとひらの風」「刀剣乱舞 ~加州清光 単騎出陣~」など芝居仕立てのドラマティックな世界が展開された。

 殺陣とダンス、そして歌が絡み合い高まって行くなか、後方には、新撰組の旗印“誠”の文字、『阿津賀志山異聞2018 巴里』の舞台映像、前回の単騎出陣、『真剣乱舞祭2017』の模様が映し出される……この時間は観客も皆、彼と一緒にこれまでを旅していたのだと思う。

  アンコールは新曲1曲を含む合計3曲を黒基調の衣裳で披露し、赤と黒の光の中、2018年版の単騎出陣ゲネプロは終幕となった

 衣裳チェンジの時間以外はほぼ出ずっぱり、歌い踊りっぱなしの90分間。佐藤流司は加州清光役として大舞台で見事に生き抜いた。決して大柄とは言えないあの身体のどこにそんなパワーがあるのだろうと思わせる濃密な1時間半。
 構成・演出・振付を担当した本山新之助は、今年もファンの心を知り尽くしたステージングを思う存分に拵えて観客を魅了。レーザー光線、スモーク、薔薇の花びら、映像、和太鼓、そして炎を使ったマジック。前回の単騎出陣を観ている観客は、その新たな深化に驚いたはずだ。

■個性を“捨て”己を“活かす”

 ここからは俳優・佐藤流司の魅力について書いていきたい。

 今回、佐藤のプロフィールを見返し、あらためて驚いた。舞台での本格デビューからまだ5年。たった5年でシビアな世界の中、ここまで階段を駆け上がった俳優がいるだろうか。
 彼の大きな強みはこと2.5次元作品において“自らの個性を消し、キャラクターとして生き切る”ところにあると思う。文字にすると簡単だが、強い自意識も自我も必要なエンターテインメントの世界で個性を捨てることは容易ではない。

 以前、佐藤がこの覚悟をしたきっかけや思いを、2018年3月7日に放送したトーク番組『ナカイの窓』(日本テレビ系)に出演し語ったことがあった。

 それは出演したある2.5次元舞台のビジュアルが発表された際、作品ファンから放たれたネガティブ、かつ辛辣な反応だったという。言うまでもなく、2.5次元作品を大きく定義するなら「マンガ、アニメ、ゲームが原作」という点が挙げられる。舞台を楽しみにしているのは演者である俳優のファンだけではない。
 胸の中で原作のイメージを大切にしてきた作品のファンも多く存在するのだ。その作品の原作ファンからの反応を目にした彼は落ち込み、以来、誰にも負けないレベルでそのキャラクターとして存在すると心に決めたそうだ。

 その覚悟と、それからの活躍を紐解くと、今回の「ミュージカル『刀剣乱舞』 加州清光 単騎出陣2018」に至る道がどれほど凄まじいことなのか理解され、胸に迫る。
 これまでもミュージカルや2.5次元作品で活躍する俳優が単独でコンサートやライブを行うということはよくあった。だが、自分本人ではなく役そのものとして90分のライブを“演じ切る”というのは稀。

 舞台に立った佐藤は「あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね」……など加州清光としてそこにいた。MC部分でも本人の素を見せない刀剣男士としてのライブはエンタメ界に新しい一歩を築いたように感じる。

 だが、佐藤の魅力は“あえて個性を封印し、完璧に2.5次元のキャラクターとして存在する”ことだけではない。

 テレビドラマと舞台の連動企画『御茶ノ水ロック』では、アツい想いを抱きながら、その不器用さで周囲とぶつかってしまうバンドマンの主人公・片山始役を4キロ減量して演じ、劇中ではバンドプレイも披露。 
 また、今年公開された映画『ダブルドライブ ~狼の掟&龍の絆~』では五十嵐純也役として主演を務めた。どこか無気力でもあり、ヘタレで無様なところも多い純也役は佐藤にとっての新境地だったと感じる。

 さらに今冬には新たな挑戦が彼を待っている。傑作映画として名高いフェリーニの『道』を音楽劇として、世界的演出家である世界的演出家、デヴィッド・ルヴォーが再構築した音楽劇『道』(日生劇場/2018年12月8日~12月28日)への出演だ。主演のサンパノを演じるのは草彅剛で、共演者にはミュージカル界、演劇界から手練れのメンバーが揃う。舞台に立つ者なら誰しも居合わせたいと願うこの作品に出演することは、佐藤にとって間違いなく大きな飛躍となるはずだ。

 時に自らの個性を封印し、時に自らの個性を最大限に魅せながら役を演じ、役として生きる佐藤。本格舞台デビューわずか5年の佐藤流司がこの先さらに大きな“奇跡”を体現してくれるのを信じつつ、その姿を客席から見つめていきたいと思う。

©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

電ファミニコゲーマー:上村由紀子

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