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[寄稿]ポール・ローマーに所得主導成長を尋ねる

10/16(火) 12:01配信

ハンギョレ新聞

 ノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク大学のポール・ローマー教授に、韓国の記者が所得主導成長について尋ねたという。所得主導成長のアイデアを彼にきちんと説明したかも疑わしいが、ローマー教授は所得の増加が新しい技術の習得につながることが重要だと愚問賢答をした。

 ローマー教授の内生的成長論は、かつてはブラックボックスのようだった技術変化を経済成長論に統合する優れた洞察を提示した。彼によると、知識を考慮すれば生産関数は規模の経済の性格を持ち、したがって持続的経済成長の核心となるのは、研究開発などを通した新しい知識の創出とイノベーション(技術革新)だ。

 いわゆる革新成長の援助と言える理論だ。彼は特に、外部効果が大きい知識の生産は市場だけに任せておいてはならず、研究開発支援など政府の積極的な政策が重要だと強調する。環境問題を研究したエール大学のウィリアム・ノードハウス教授とともに彼がノーベル賞を受賞した理由も、二人は共に経済成長における市場の失敗を克服しなければならないという理論を提示したためだ。

 こうした内生的成長論の観点で見れば、韓国はきわめて立派な国だ。国内総生産に対する研究開発支出は毎年増加しており、2016年には4.2%でイスラエルに次ぐ世界2位で、総人口に占める研究者の比率も同様だ。そのためか、総人口に対する特許も世界最高水準で、種々の機関が発表するイノベーション・ランキングでも上位圏におり、長期的生産性上昇率も非常に高い。

 それでもイノベーションが不十分という憂慮の声が高いのはなぜだろうか。おそらく、研究開発などイノベーションの努力と成果が少数の大企業だけに集中していて、多くの領域で既得権層と地帯が強固な現実との関連が大きいのだろう。また、政府の研究開発支援が冒険的でなく、長期的でもないこととも関係があるだろう。

 実際、韓国でイノベーションの効果を見せる総要素生産性の上昇率も、2010年以後大きく下落した。それでは私たちは、研究開発の効率性を高めて成果を皆が共有するために、制度と社会をどのように公正で革新的なものにするのか、自らに質問を投じなければならないだろう。

 ここでローマー教授に投げかけた質問を考え直してみよう。果たして所得主導成長はイノベーションとどんな関係があるだろうか。興味深いことに、各国のデータを比較してみると、より平等な国家が人口当たりの特許と長期的な総要素生産性の上昇率がさらに高い。不平等が深刻だと、イノベーションと生産性上昇が阻害される様々な可能性が存在するためだ。

 例えば、ハーバード大学のラジ・チェティ教授らの最近の研究は、米国で3学年時の数学の成績が高かった生徒が後に特許を取得する発明家になる確率は高いが、低所得層児童の場合には高所得層に比べてはるかに低いと報告する。才能のある子どもたちが、家庭が貧しいために発明家として成功できず、“失われたアインシュタイン”になってしまうということだ。韓国もほとんど違いはないだろう。

 また、最近のマクロ経済学研究は、世界金融危機以後の総需要鈍化が、企業らの新技術導入と研究開発投資の停滞につながり、米国の総要素生産性上昇の鈍化に影響を及ぼしたことを示している。不況はイノベーションと長期的成長にも悪影響を与える恐れがあるということだ。

 このことは、イノベーションのためにも不平等を改善し、総需要を拡大する努力が重要だということを意味する。すなわち、所得主導成長の方向がイノベーションにも役立つということだ。最近国際機関が、包容と革新は並立しなければならず、財政の積極的役割が必要だと強調するのもこのような理由だ。しかし、新政府になって不平等は拡大し、事実上の緊縮で内需は停滞した。ならば私たちは、果たしてそのような努力を十分に傾けているのかも自問してみなければならないだろう。

イ・ガングク立命館大経済学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:10/16(火) 12:01
ハンギョレ新聞

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