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[記者手帳]文在寅政権の「人間中心経済」は竜頭蛇尾に終わるのか

10/21(日) 15:11配信

ハンギョレ新聞

 文在寅(ムン・ジェイン)政権が4日、2022年までに未来車と半導体・ディスプレー、エネルギー新産業など5大分野で大企業を中心に125兆ウォン(約12兆4千億円)の投資を通じ、10万7千人分の雇用創出という「新産業雇用創出民間投資プロジェクト支援策」(以下、支援策)を発表した。政府は規制緩和、迅速な許認可、産業インフラの適期供給など、企業のネックの解決と初期市場の創出などを支援するという腹案だ。

 しかしこれは、産業通商資源部が今年5月に大企業代表らと会い、2022年までに160兆ウォン(約16兆円)を投資し、20万件の雇用を創出すると発表した「新産業プロジェクト投資・雇用ロードマップ」と酷似している。5大新産業分野、プロジェクト期間、参加大企業がすべて一致する。一方、わずか5カ月で投資は35兆ウォン、雇用は10万人分が減った。政府は「投資・雇用計画の間接効果まで含めるかどうかにより差が生じうる」と釈明した。しかし、“二番煎じ”論議に続き、政府が数字遊びまでするのかという疑問を静めるには力不足のようだ。

 政府の「支援策」は、キム・ドンヨン経済副首相兼企画財政部長官が主導する「革新成長」政策の一環だ。財閥を前面に出した投資・雇用拡大政策という点で、すでに失敗に終わった朴槿恵(パク・クネ)政府の「創造経済」と大差ないという指摘が少なくない。国策研究所のある博士は19日、「そのような方法が有効だったならば、李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵政府時代にすでに投資・雇用の拡大に成功しているではないか」とため息をついた。朴槿恵政府は、ベンチャーや中小企業各社が開花する創造経済の生態系づくりに力を入れる代わりに、目先の成果を出すために創造経済革新センターの支援を最初から財閥に割り当てた。

 技術力が優れているという評価を受けている国内のある半導体装備メーカーは最近、中国から吸収提案を受けた。提示された価格が会社の時価総額の3倍に達するという破格の条件だった。中小企業の代表は一気に1兆ウォン(約1千億円)に近い巨額を手にすることができるのに、世界的な強小企業を夢見てこの十数年間に技術開発だけに数千億ウォン(数百億円)を注いだことにこだわり、断った。しかし、周辺では結局サムスンと取引していては未来が暗いという現実を直視しなければならないという指摘が多かった。私募ファンド企業の代表は「サムスン電子が“半導体好景気”を追い風に、第3四半期の営業利益は17兆ウォン(約1兆7千億円)を上回り最高記録を更新したが、半導体協力会社のなかで世界的な部品・装備企業として成長した例があるか」と皮肉った。

 文大統領はかつて、政府の輸出大企業中心の経済成長政策から抜け出すと公約した。大手企業の成果が社会全体に広がる「落水効果」が途絶え、強者の横暴と不公正取引が横行し、不平等さが深刻化したからだ。その代わり、所得主導成長・革新成長・公正経済を三つの軸とする「人間中心経済」を示した。大統領府の関係者は「革新成長は投資・雇用拡大のために財閥に依存するものではない」とし、「中小企業が努力に見合う正当な対価を受けられるよう、公正経済をもとに中小企業革新生態系を構築するのが主要な内容」だと説明した。

 しかし、キム・ドンヨン副首相がこれまで取り組んだことは、大企業中心の規制緩和と財閥に会って投資・雇用計画を発表することだった。文大統領は今年8月、雇用の悪化と最低賃金引き上げの失敗論を打ち出した野党の攻勢にもかかわらず、所得主導成長政策をさらに強力に推進すると明らかにした。しかしその後、所得主導成長政策はほとんど見当たらず、朴槿恵政府の創造経済とあまり違いがないほど変質した革新成長だけが浮き彫りになっている。また、政策の方向と内容をめぐり、経済チーム内で絶えず対立と葛藤が繰り返されている事態も、1年6カ月も放置されている。経済チームのコントロールタワーが揺れる中、所得主導成長は最低賃金という「石の角」にひっかかってふらつき、革新成長が朴槿恵の掲げた創造経済の亜流に変質するならば、文在寅の掲げる「人間中心経済」が竜頭蛇尾に終わるのも杞憂ばかりではないだろう。

クァク・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:10/21(日) 15:11
ハンギョレ新聞

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