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ボクシングの村田諒太は、“作られた世界王者”だったのか

10/25(木) 12:31配信

ITmedia ビジネスオンライン

 ショックを受けた人は多いだろう。プロボクシングの村田諒太選手がWBA世界ミドル級王座から陥落した。

村田諒太選手がWBA世界ミドル級王座から陥落した(写真提供:ゲッティイメージズ)

 学生時代から思い描き続けてきた米国ラスベガスのメインイベント。ところが夢のリングはゴングが鳴った後、とてつもない残酷な結末が待っていた。相手の指名挑戦者でランキング3位のロブ・ブラント(米国)に0ー3で大差の判定負け。ダウンこそしなかったとはいえ、1200発を超えるパンチを被弾し、顔面を大きく腫らした姿は衝撃的だった。

 誰がどう見ても完敗だった。スピードとフットワークを生かしながら中間距離で矢継ぎ早に次々と強烈なパンチを繰り出す相手の攻撃に最後までペースをつかめなかった。確かに3ラウンド以降、打ち合いに転じてからはいくつかの有効打もあり、重い左のボディブローや右ストレートがヒットするシーンもわずかながらにあった。

 しかし、後半のラウンドになってもブラントの動きは鈍くなるどころかさらに勢い付き、対する村田のほうが逆に疲れが出てペースがガクンと落ちてしまい、ミスブローで体が流れるという今までにない場面も見られた。手数でも圧倒され、終始翻弄(ほんろう)されっ放しだった。

 ブラントは王者対策を入念に練っていたという。一方の村田には「調整に失敗していた」との指摘も聞こえてくる。加えて王者陣営には「ブラントはオーバーワークで最後は必ずペースが落ちてくる」という読み違いもあり、終盤にじわじわと追い詰めて強打を重ねた後に勝利するプランは水泡に帰した。

 ただ、試合に至るまでどのようなプロセスであったにしても、村田にとって負けは負けだ。その事実はいかなる理由があっても覆しようがない。そして、ブラントのようなハンドスピードが速く手数に優れるアウトボクサータイプの選手に対し、図らずも今の村田のボクシングが通用しづらいことまで証明されてしまった。

「金のなる木」構想は崩壊

 ブラントは世界3位ながら28歳の新鋭。これまで世界戦での実績はほとんどなく無名に近い存在だった。契約を結ぶ世界有数のプロモーターでトップランク社のボブ・アラムCEOはボクシングの本場・ラスベガスでの世界戦メーンイベントでブラントを踏み台にさせ、米国内での村田の知名度を上げて本格的な米国進出の足がかりにしようとも目論んでいた。「金のなる木」に仕立て上げようと、バックアップ体制を整えていたのである。

 だが、それも伏兵に完敗を喫して崩壊。当初はこのブラント戦を突破すれば、来春にも同級元世界3団体統一王者のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)とのドリームマッチがラスベガスか東京ドームで実現する予定だったものの、言わずもがな完全に消滅した。

 とはいえ、ゴロフキンは当然ながらブラントよりパンチ力、ディフェンス、コンビネーションなどすべての面で比較にならない格上の存在。ブラントにコテンパンにされてしまった内容を見る限り、怪物のゴロフキンに対して今のままの村田のスタイルが通用するとはとても思えない。今回以上の惨劇が来春のゴロフキン戦で待っていたかもしれないと考えれば、ここでブラントに負けて早い段階で「現実」に直面したことは、もしかしたらよかったと言えるのではないだろうか。

 ガードを固めながら圧力をかけ、顔面へのワンツー、ボディーで相手を消耗させて防御が下がったところでラッシュを仕掛けていく。ざっくり言うと村田の攻撃パターンはこういう流れだ。

 あくまでも個人的な感想だが、今までのマッチメークは「安パイ」の相手ばかりで、どちらかと言うとスピーディーではない村田に“付き合う”ようなインファイターが多いように思えた。村田は人柄もよく、頭のいい人なので人気は高い。それでも、ことボクシングの内容に関しては「地味」と評している人も多いのが現状だ。

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