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『新潮45』問題を古いゲイ3人が考えた(2) LGBTブームの「功罪」と、「過激な活動家批判」のゆくえ

10/26(金) 12:05配信

BuzzFeed Japan

『新潮45』問題について語り合う座談会報告の第2回。抗議をふくめ、さまざまなLGBT活動へ寄せられる「差別もないのに活動家が騒ぎすぎだ」「あれは弱者ビジネス、差別商法だ」という非難が渦巻いています。

日米そして古今の当事者運動を、アメリカで、二丁目で、リブ活動の場で見て、かかわってきた3人(北丸雄二、小倉東、永易至文)は、それにどう答えるか?

* この座談会は、語り手のひとり小倉東さんが新宿二丁目で経営する「ホモ本ブックカフェ オカマルト」で、トークライブの形式で開催されました。

* この座談会は、男性シスジェンダー・ゲイ指向の3人の視点で語る特徴と限界があります。性的マイノリティ全体を指す場合とゲイを指す場合が、区別なく「ゲイ」と表現されたり、自称として「オカマ」「ホモ」「レズ」が使われたりすることがあります。あらかじめご了承ください。
【寄稿:永易至文・NPO法人事務局長、ライター、行政書士 】

LGBTブームはなにをもたらしたのか

永易 こうした社会的な「反発」が向けられているLGBTブームは、2015年、渋谷区での同性パートナーシップ条例といわれるものがきっかけになったと思います。このかんの功罪というとおかしいですが、小倉さんはどう見ておられますでしょうか。

小倉 LGBTブームの功罪ねぇ……(笑)。まずは「功」。当事者でみずからのセクシュアリティやアイデンティティを背負って、顔を出して発言する人が増えたことは喜ばしいことです。自民党前の抗議活動もそうでしたし。それによって、自分たちの存在が政治的な存在であるという認識やアピールが進んだのでは。

一方、「罪」は、SNSなどネット空間で匿名で語られる言説が、ゲイ全体の意見としてとりまとめられていく……それは、前時代のゲイ雑誌と同じですよね。

北丸 LGBTブームのなかで、とかく批判のマトにあがりやすいLGBTビジネス----講演会だの研修だのがけっこう盛んですよね。以前、あるところで講師として若いゲイ男性が来て経営者や商工界の人に「LGBTとは何か、どう向き合うか」といったテーマで講演するのを聞いたことがあります。

で、その内容が「ウソ」とは言わないけど、ちょっとあまりにマニュアル的で上っ面な危なっかしいもんなんだな。あいかわらず「〇〇さんはLGBT」と言ったり。なんで一人で四役もやれるの(笑)。

LGBTがらみだけではなくて、それ以外の社会や歴史にかんする知識にも、危うさを感じる点もある。当事者という立場だけで持ち上げられたり、たんにLGBTの用語解説ができればいいってわけじゃないからね。アメリカ人なら誰でも英語が教えられるかというのと同じことです。

永易 まあ、北丸さんのような該博な知識をお持ちのかたからは、いろいろ不十分に感じられるところもあるでしょうね。でも各地では研修ブームで、いろいろな当事者が人前で話をするなか、内容の水準が担保されているのか、たんに「苦しかった私の話聞いてください」の個人語りで終わってないか、自分の一事例を普遍化して語ってないか、立ち止まる部分はあるかもしれませんね。

私自身はLGBTブームのなか、「広告的キャンペーン」「代理店主導」な風潮が進みすぎて、中身・生活的実態が伴っていない印象があります。そして、目につくのは企業領域での対応進展ですね。

渋谷区条例に先立ちLGBTブームは2012年に経済誌2誌が最初は「眠れるLGBTマーケットを狙え!」と煽りましたが、すぐにLGBTマーケットなんてない(訪日外国人はまだしも、少なくも国内当事者には)と見抜くや、今度は人材獲得とダイバーシティ経営に方向転換。新自由主義との親和性がどうも気になります。

あるいは、「寄りそう」「理解」「受容」「ハート」「つながる」「支援」といった、ふわっとした「こころ」ワードが目につくのも気になります。実際、いまは支援ブームで、支援の必要な人より支援をしたい人のほうが多いのではないかとさえ思います。その一方で、法や制度など、確としたものへの動きや関心が、当事者も含めてなかなか高まらないのが歯がゆい思いです。

北丸 でも、あなたは法や制度が進展しないというけど、渋谷区や今度の東京都など条例レベルでの整備も動きはじめたり、あなたが代理店仕事とか新自由主義と切って捨てた企業の動きも、そこまで動かしていった当事者NPOの手腕はたいしたものじゃないですかーー僕らの時代にはできなかったし、パラダイムも違っていたわけだけれども。

実際、私が言いたいのは、さっき団体の研修に触れたけど、べつにそれを批判しようというわけでなく、いろんな活動がいろんなところで並行して進み、そっちはそっちでやって、こっちはこっちでやりますから、となればいいだけですよね。

永易 活動するひとたちのなかで暗黙の役割分担、連携プレーがやれればいいわけで、当事者相互で足をひっぱりあうのは、私もエネルギーロスだと思っています。

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最終更新:10/26(金) 12:05
BuzzFeed Japan

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