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緊急避妊薬(アフターピル)市販薬化の是非 日本での薬剤師の立ち位置は?

2018/10/31(水) 11:08配信

BuzzFeed Japan

海外の緊急避妊薬と薬局

「緊急避妊薬を販売するためには、薬剤師が十分な知識を持つ必要がある」という会議の意見と、「病院にかかることなく自由に購入できる薬であり、安全なはずだ」といった現状の国民的な認識は、残念ながら全く正反対です。

はたして日本人は、これまでの認識を捨て、「使い方によっては安全ではなく、説明書に記載しきれない情報を薬剤師とやり取りすべき市販薬」が登場することを求めているのでしょうか?

また厚労省や医師会・薬剤師会はそうした国民的理解を促す制度設計や呼びかけについて、一貫した姿勢で臨めるのでしょうか。

私は懐疑的です。

この状況を放置したまま市販薬化を実現したところで、説明書に記載された内容の一部を購入者に伝えることしかできない事例が頻発するでしょう。それは、過去に市販薬化した医薬品について実際に今、問題視されていることです(オメプラゾール等のプロトンポンプ阻害薬に関する議論を参照してください)。

緊急避妊薬の問題に熱心に取り組まれている産婦人科医の北村邦夫氏が、イギリスの薬局で緊急避妊薬を購入しようとした際のエピソードについて語っています。

薬剤師からは「男性には売れない」と断られ、名刺を見せたうえで「日本に緊急避妊薬を導入するため調査研究をしている」と伝えてもダメだったとのことでした。同行していた女性と共に再度訪れたことで、やっと購入できたものの、その際には15分ほどの説明(カウンセリング)があったそうです。

このエピソードは「薬剤師は役割を担うことができる(市販薬化は可能)」との観点から語られたものですが、こうした薬剤師の姿勢は、日本の消費者が薬剤師としてイメージする姿、(そして特に)緊急避妊薬の市販薬化で期待する対応とは異なるのではと感じます。

日本の薬事政策は、(諸外国の事例を参照し、また多くの有識者が議論に参加してきたにも関わらず)「薬剤師は役割を担わない(担う必要がない)」との従来の認識を追認してきました。

強い口調で主張し、政治力も併せ持つ医師会への忖度から、誰もが逃れることはできませんでしたし、「国民のニーズ」「消費者のニーズ」といった言葉を持ち出すことで、自らが批判されることを避けてきた面もあるのだろうと思います。

多くの女性が経口避妊薬(ピル)の利用に抵抗がなく、また圧力を感じることなく医師を受診する、薬局薬剤師も患者(購入者)に忌憚なく助言・介入する海外の状況は、日本とはずいぶんかけ離れています。

(続く)

【高橋 秀和(たかはし ひでかず)】薬剤師
1997年、神戸学院大学卒。病院、薬局、厚生労働省勤務を経て2006年より現職。医療・薬事・医薬品利用についてメディア等で記事の監修や執筆をしている。ツイッターはこちら(@chihayaflu)

高橋 秀和

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最終更新:2018/10/31(水) 11:08
BuzzFeed Japan

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