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業種の概念を無くす、それが旭化成型の複合経営

10/31(水) 12:06配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 小堀秀毅旭化成社長(1)

 高度成長期から1980年代にかけて旭化成は、本業の合成繊維事業から石油化学、住宅などに多角化を推し進めた。

 「ダボハゼ経営」とも言われたほど積極的だったが、玉石混淆の観は否めず、見直しを繰り返してきた。結果、何が本業とは言えないユニークな業態になり、前3月期連結決算で売上高、利益ともに過去最高を更新した。旭化成型複合経営を小堀秀毅社長が語る。(聞き手は経済ジャーナリスト、森一夫)

 ――旭化成は昔、東レ、帝人と並ぶ3大合繊メーカーでしたが、今東京証券取引所の業種分類では「化学」になっています。しかし「化学メーカー」かと言うと、ちょっと違う。本業、多角化事業という概念を超えているように思いますが。

 基本的に我々は強い事業の集合体を目指しています。今、旭化成には3つの事業領域があります。素材全体を手掛けるマテリアルと住宅関係、それにヘルスケアの3つの事業領域の中で、収益性の高い付加価値型事業の集合体をつくっていくというのが、基本的な方針です。

 これからはもう何々業種という考え方は無くなるのではないかと考えています。ですから私は社内では極力、「繊維」とか「ケミカル」とか業種を示す言葉は使わないようにしています。

 テクノロジーは、ファイバーテクノロジー、ケミカルテクノロジーとして脈々とつながっていますが、産業として見たら、そういう垣根はだんだん低くなり、無くなっていくでしょう。

 新たな成長領域は、そうした垣根を越えたところ、あるいはまたいだところから出てくると思っています。

 ――2018年3月期連結決算では、売上高は前期比8.5%増の2兆422億円、営業利益は同24.6%増の1985億円でした。長期経営ビジョンでは、2025年度に売上高3兆円、営業利益2800億円を目指していますね。

 うーん、もうちょっと目線を上げなければいけないかなと思っています。次の中期経営計画ではね。

 16年度からの中計で、10年後の目標として売上高3兆円、営業利益2800億円を掲げたのです。当時は売上高営業利益率が7%程度の水準だったのですが、いま足元では9%前後まで上がっています。

 だから売上高3兆円を目標に掲げるのなら、営業利益は3000億円以上にしないといけないかなとね。次期中計は19年度からスタートしますので、その中ではもう少し目線を上げようかなと考えているところです。

 今の中計を作成したのは15年度後半だったので、当時はそんなものかなと思っていたんです。しかし最近、景気にも恵まれて、業績が目標より前倒しで推移していますからね。

 ――一般論で言うと、売上高営業利益率は10%以上でないと。

 やはり付加価値型事業の集合体ですと、そのくらいはないといけないでしょう。今から思えば、そうなんです。

 ――古い業種分類も合わなくなり、事業構造も大きく変わっていきますね。

 これから10年先は、業種うんぬんの概念にとらわれて仕事をしていく状況ではないと思っています。私が16年4月に社長になった時に、繊維、ケミカル、エレクトロニクスと分かれていた部門を、「マテリアル」として1つの事業領域に集約しました。

 それまではマテリアルの3部門の他に、住宅建材、ヘルスケアという具合に分かれていたのです。私がマテリアル管掌を兼務しているのは、3部門を1つにしたので、この事業領域全体をよりよい形にコネクトする。つまり内部で交流を促進するのに、私が旗振りをした方がいいだろうと判断したからです。

 ――小堀さんが入社した1978年頃、旭化成は合繊メーカーでしたね。ここまで事業構造を変えられた要因は何ですか。

 私が入社した当時は、合繊から進出した石油化学がどんどん伸びだしたころです。現在のように変革できたのは、産業構造や環境の変化に合わせて、事業のポートフォリオを変えられる適応力があったからだと思います。

 要するにトップマネジメントの変革力と、現場からのボトムアップによる提案と実行力が、うまく組み合わさった結果です。特に現場力が強いのではないかなと思いますけど。(笑)

 ――昔、アクリル繊維の「カシミロン」がありましたが、繊維部門は随分縮小しました。縮小される部門とのあつれきはないのでしょうか。

 そういうトップと現場との葛藤は常にあるわけです。だけどいったん決まれば、現場は自分たちに与えられたミッションを実現するために、提案と実行力を発揮する文化が脈々と続いているのだと思います。

 トップマネジメントは、時代のメガトレンドをとらえながら、その時々の社会環境や産業構造に合わせて、事業のポートフォリオをどう変えていくべきかを把握していく。

 この2つがうまくかみ合っているのが旭化成の強みです。それを可能にしているのは、自由闊達な企業風土です。上下の距離が近くて、ものが言いやすく、風通しがいいと言ったら手前ミソになりますが。(笑)

 ――メーカーですから、変革を進めるには技術力も欠かせませんね。

 コアテクノロジーを大切にしてきたことも、大事な点ではないですか。ベースとなる技術が無ければ、事業の転換や成長を発想するのは難しいでしょう。

 そこでも重要なのは最終的には人材です。好奇心旺盛でいろんな技術に興味を持つ多彩な人材がいることが極めて重要で、今後もそれが変革を進めるうえでカギになります。

 自分の裁量で動けて、上に向かってこうやらせてくれと、自由にもの申すことができる企業風土がやはり大事だと思いますね。


■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:10/31(水) 12:06
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