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本庶氏「貢献していない」発言に製薬業界から波紋

11/1(木) 20:17配信

産経新聞

 ノーベル医学・生理学賞の受賞が決定した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授の発言が、製薬業界に波紋を広げている。受賞直後の会見で、がんの画期的免疫治療薬「オプジーボ」を製造販売する小野薬品工業に対して「研究に貢献していない」と発言したからだ。研究機関で生まれた革新的な基礎研究を製薬企業が医薬品として実用化するというスタイルは、世界屈指の創薬国である日本で長く行われてきた手法。業界からは「残念だ」「協力し合わなければならないのに」といった声がもれる。

 「会社の名誉のためにも、研究に貢献したことははっきり申し上げたい」

 小野薬品の相良暁社長は10月、産経新聞のインタビューにこう話した。京大とは研究への貢献に関する覚書も交わしているといい、「特許出願や研究への費用的なサポートを行い、患者さんに薬を届けるという役割を担ってきた」と強調する。

 関西の中堅製薬企業だった小野薬品はがん領域の創薬経験がなかったこともあり、オプジーボの開発に踏み切るまでには時間もかかった。だが、研究員の熱意や経営判断もあって、実用化に動いたという。

 新薬開発の成功率は、2万~3万分の1とも言われるほど難しい。期間も10年近くかかり、投資は数百億円以上とリスクの多いビジネスだ。オプジーボの開発途中にも苦労は多かった。

 当時、免疫療法は効果が証明されない民間療法のイメージも強く、治験(臨床試験)を担う医療機関の担当者に「効いたら丸坊主になる」とまで言われたこともあり、ほかの抗がん剤の治験が優先され、オプジーボは後回しにされた。しかし、実際に治験に入ると劇的な効果が現れ、瞬く間に世界に注目される薬となった経緯がある。

 新薬開発を自社の研究体制だけでなく、大学や学術機関の優れた研究にも頼り、創薬を目指す動きは日本では多く行われてきた。オプジーボ以前にも中外製薬の抗体医薬品「アクテムラ」など画期的な薬が学術研究と企業の協力によって生まれている。

 本庶氏が「小野薬は研究に貢献していない」と発言したことに対して、製薬業界に反発も出ている。他社の幹部は「小野薬品は精いっぱい努力した」「大学などの基礎研究を実用化して、製薬企業が医薬品として患者さんにお届けする。互いにウィンウィンの関係でありたい」などと話す。

 小野薬は1日、決算会見を開き、相良社長は本庶氏との共同研究の成果を受けて「学術機関との共同研究は今後より積極的に行って創薬につなげたい」とあらためて語った。同社では共同研究の件数を拡大させ、現在、国内外の大学、研究機関と約270件の共同研究を行っている。

最終更新:11/1(木) 20:20
産経新聞

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