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【動画あり】パンタ下げて走る次世代新幹線「N700S」! なぜ? ひとつじゃない目的

11/1(木) 17:31配信

乗りものニュース

床下にリチウムイオンバッテリーを搭載

乗りものニュース

 電車は通常、線路の上に設置した電線(架線)などから電力を取り入れ、台車に設置したモーターを回すことで走ります。それは新幹線の電車も例外ではありません。

【写真】通常の半分! 8両編成のN700S

 ところが、JR東海が開発した次世代型の新幹線電車「N700S」の確認試験車は、架線から電力を取り入れることなく走行できます。実際にパンタグラフを降ろしたうえで、ゆっくりと走る姿も公開されました。これはいったい、どういうことなのでしょうか。

 その答えはN700Sに導入された「バッテリー自走システム」。車両の床下にリチウムイオンバッテリーを搭載し、ここから直流750Vの電力を機器に供給します。JR東海によると、高速鉄道の車両にバッテリー自走システムを導入したのは、N700Sが世界で初めてだそうです。

 しかし、電化されていない(架線などがない)路線はともかく、新幹線はすべて電化路線。非電化路線への直通運転も行っておらず、わざわざバッテリーを使って走る必要はありません。JR東海がN700Sに「バッテリー自走システム」を導入したのは、災害や設備故障などの異常時に対応するためです。

 地震などにより新幹線で長時間にわたり停電が発生した場合、列車が駅に停車しているときなら、その場で乗客を外に出して避難させることも難しくないでしょう。しかし、駅間の線路を走っている最中に列車が停止、避難する場合、客に線路を歩いてもらうなどの必要があります。

 橋の途中で停止した列車から避難するとしたら、歩いている最中に川へ転落する可能性も考えねばなりません。地震ならトンネルの壁面などが崩落する可能性もあり、そう簡単には列車の外に客を出すことができないのです。

異常時以外での活用も検討中 どう使うのか?

 そこでJR東海は、安全に避難できる場所まで自力走行できるよう、バッテリー自走システムの導入を考えました。

 N700Sは現在使われている車両に比べ、機器類の小型化や軽量化が図られています。機器の小型化によって床下のスペースに余裕ができたことから、「バッテリー自走システム」の導入が可能になりました。高速運転は無理ですが、30km/h程度までの低速なら架線の電力を使わず走れるといいます。

 バッテリーで自走する場合、架線から電力を取り入れて走るのに比べ、走れる距離がとても短くなるのが難点。ただ、長いトンネルや橋の外に出られるだけの距離を走れればよいため、走行距離の短さは大きな問題にはなりません。

 ちなみに、JR東海は異常時だけでなく、車両の検修や整備作業などでの「バッテリー自走システム」の活用も検討しているといいます。具体的な活用方法は明らかにされていませんが、たとえば車両基地で架線の電気を切って車両の検査や修繕しているとき、少し動かしたくなっても自走できますから、作業時間の短縮などのメリットがありそうです。

 JR東海によると2018年9月11日と12日、東海道新幹線の浜松工場(静岡県浜松市)でN700Sのバッテリー自走試験を実施。約5km/hの速度で工場内の線路を走りました。1回の走行距離は約300mで、2日間でのべ3km以上を走行。2019年度には速度を30km/hに引き上げて自走試験が行われる予定です。

草町義和(鉄道ライター)

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