ここから本文です

<インフルエンザ>服用1回で効果 新薬「ゾフルーザ」とは

11/3(土) 9:30配信

毎日新聞

 インフルエンザへの警戒が必要な季節がやってきた。手洗いなどの予防は欠かせないが、今年は、インフルエンザにかかってしまった時の治療が大きく変わりそうだ。厚生労働省は今年2月、塩野義製薬が開発したインフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を承認した。薬は3月に発売され、今シーズンから本格的に使われる。ゾフルーザはこれまでの治療薬「タミフル」などとどう違うのか。気になる効果や副作用について、インフルエンザに詳しい廣津医院(川崎市)の廣津伸夫院長に聞いた。【毎日新聞医療プレミア・鈴木敬子】

 ◇細胞内でウイルスの増殖を抑える

 インフルエンザ治療薬は現在、経口薬のタミフル(1日2回を5日間)▽点滴薬のラピアクタ(1回)▽吸入薬のリレンザ(1日2回を5日間)、イナビル(1回)--の主に4種類が使われている。これらは「ノイラミニダーゼ阻害薬」と呼ばれる。

 インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、人の気道の粘膜細胞に感染し、細胞の中で増殖する。増殖したウイルスは細胞から出て周囲に広がろうとするが、感染細胞やウイルス同士がくっついて拡散することができない。そこで、細胞に移る際にノイラミニダーゼと呼ばれるウイルスの酵素が働いて、離れるのを手伝う。ノイラミニダーゼ阻害薬はこの働きを邪魔して、周りの細胞に感染できなくする。

 一方、新薬のゾフルーザは「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれ、細胞内でのウイルス増殖を抑える働きがある。

 ウイルスは自分自身では増殖できないため、宿主であるヒトに寄生して増殖しようとする。しかし、ウイルスは自分の遺伝子情報を伝えるm(メッセンジャー)RNAという物質を持っていないので、宿主のmRNAの一部であるキャップ構造を奪い取ってウイルスのmRNAを作り、その情報を基に自分に必要なたんぱく質を作る。ウイルスがキャップ構造を奪い取るときにウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素が働くが、ゾフルーザはその働きを阻み、ウイルスがmRNAを作れないようにする。

 ◇たった1回の服用で、1日でウイルスが消える

 ゾフルーザは従来の4薬と同様、季節性のインフルエンザA型とB型の両方に使うことができる。しかも、服用は1回のみでよいという。症状が出たらできる限り速やかに服用する。体重が10kg以上あれば、子どもでも飲むことができる。妊婦に対しては原則使わない。

 では、効果はどの程度なのか。インフルエンザA型またはB型に感染した、12~64歳の日米の患者計1064人を対象に2016~17年に行われた治験では、ゾフルーザ、タミフル、プラセボ(偽薬)の3群に分けて投与し、それぞれ体内からウイルスが排出されるまでの時間を比べた(治験時、タミフルは10代への投与が原則中止だったため20~64歳。10代への投与は18年8月に再開された)。

 その結果、プラセボでは排出まで96時間かかったのに対し、タミフルでは72時間、ゾフルーザは24時間(いずれも中央値)だった。つまり、ゾフルーザはタミフルより2日ほど早く患者の体内からウイルスをなくせる。早くウイルスが消えるため、感染の広がりを抑えることができるという。

 ただし、約1割の患者(12歳未満の子どもは約2割)では、ゾフルーザの服用によってウイルスが変異し、薬が効きにくくなるという結果が出た。

 ◇副作用はタミフルより少ない

 副作用も気になるところだ。上記の治験では、副作用の発現率はゾフルーザが4.4%、プラセボで3.9%、タミフルで8.4%--で、ゾフルーザはタミフルよりも少なかった。ゾフルーザで生じた副作用を見ると、下痢が11件で最も多く、アラニンアミノトランスフェラーゼ(肝臓に多く含まれる酵素の一種)増加が4件、悪心、嘔吐(おうと)、白血球数減少--が2件だった。廣津院長は「比較的安全だ」と指摘している。

 ◇そろそろ予防接種の準備を

 強力な治療薬ができたとはいえ、インフルエンザにはかかりたくないもの。そろそろ予防接種のスケジュールを組むことも大切だ。年によって流行期にばらつきはあるものの、過去10年ほどの流行状況を分析すると、おおむね年明けから流行が始まり、1月末~2月ごろに大きな流行が起こるという。この時期に照準を合わせて、大人は11月終わりごろに接種を受けるのが望ましい。そうすれば12月半ばごろから効き目が表れるという。

 子どもは免疫がつきにくいため、2回の接種が必要だ。10月末ごろに1回目、それから約4週間後の11月末ごろに2回目の接種をするのが理想的という。ただし、廣津院長らの研究で、インフルエンザに罹患(りかん)したことがある人はワクチンの抗体ができやすいが、罹患歴がないと2回接種しても3分の2程度しか免疫がつかないことが分かっている。

 廣津院長は「予防接種が十分効くかどうかは分からなくても、接種して予防に努めることは大切だ。一度でもインフルエンザにかかったことがあり、免疫がつきやすい人たちがしっかりと接種を受けて予防することで、子どもなど免疫がつきにくい人たちの感染を防ぐことにもつながる」と話している。

最終更新:11/3(土) 9:30
毎日新聞

あなたにおすすめの記事