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獣医師の職をすて、29歳で弟子入り 異色の落語家・林家卯三郎さん

11/3(土) 14:30配信

sippo

 獣医師免許を持つ異色の落語家が上方にいる。林家卯三郎(うさぶろう)さん(48)。獣医師として安定した職を捨てて、29歳で師匠に弟子入りした。まさに波乱に満ちた半生について語ってもらった。

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     ◇     ◇

 卯三郎さんは1970年、岐阜県笠松町で生まれた。自宅で黒柴を飼っており、幼い頃から動物好きだった。「シートン動物記」やイギリスの獣医師ジェイムズ・ヘリオットの本を読み、テレビで「ムツゴロウの愉快な仲間たち」を見て育ったという。一方で、中学生の頃から会社員の父の趣味に付き合って、落語を一緒に聞くようになった。

 動物好きが高じて、獣医師を目指し、北海道の酪農学園大学に入学した。一方で、落語は趣味として、落語研究会に入って日々練習していた。ところが、進路を考える大学5、6年生になると、だんだん雲行きが怪しくなる。勉強にいまひとつ身が入らず、獣医師の国家試験に落ちてしまった。国家試験の合格率は9割ほど。その試験に落ちてしまい、一浪することになった。

安定した人生を捨てて

 翌年、なんとか国家試験に合格し、大学の先生のはからいで岡山県の職員になることができた。獣医師として、酪農家の衛生指導や家畜の健康状態を管理する「防疫」の仕事だ。

 獣医師で公務員。大学の後輩だった彼女と結婚もして、安定した人生を歩む道筋が見えてきた。ずっと趣味で続けていた落語は、年に一度、北海道で高座に上がったり、岡山で噺家の前座で出たりしていたという。仕事も趣味も順風満帆である。

 しかし、心の中で何かがくすぶり続けていた。そして、ついに、こう思い至る。

「先が見えている人生なんてつまらない。このまま落語を趣味で続けるなんてできない。落語家として一旗挙げよう」

激怒する父、燃え上がる気持ち

 就職して1年目だった。なれる当てはなかったが、落語家になると決意をした。そして上司に退職願を提出してしまった。妻はというと、賛成もしなければ、反対もしない状態だったという。

 それを電話で告げると、父は激怒した。怒り心頭である。しばらくして「落語家になる、ならない問題」を話し合うため、京都で親族会議が開かれた。妻の両親はまゆをひそめ、卯三郎さんの父は、妻に向かって「あんたがそばにいながら、何だ!」と責め立てた。卯三郎さんはその場を取りつくろいながらも、気持ちは萎えるどころか、燃え上がった。「預金はあるのか!?」という父の一言が気持ちに火をつけたという。

「責め立てられて悔しかった。反対されたら、ますます落語家になりたくなりました」

 しばらくして父から電話がかかってきた。

「今から岡山に行く。上司に謝って、退職願を取り下げてもらう」と怒鳴られた。卯三郎さんは腹立たしさと、父への恐怖がないまぜになり、何はともあれ「会いたくない」と、妻と2人で家を飛び出し、上司に相談に行った。だが、上司からは落語家はあきらめて、職場に復帰することを勧められた。その後、父もやって来て上司に謝罪。結局、卯三郎さんは職場復帰することになったという。

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最終更新:11/3(土) 14:30
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