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世界不況の足音が聞こえる

11/5(月) 12:34配信

ニュースソクラ

【けいざい温故知新】不気味な株安―終末博士ルービニの警告

 NY株の下げが世界に波及している。英語の秋、Fallには「落ちる」という意味もある。株の急落としては、大恐慌の引き金となった1929年の「暗黒の木曜日」(10月24日)も、過去最大の下げとなった87年の「ブラックマンデー(10月19日)も秋だった。

 リーマン危機を予告して「終末博士」(Dr.Doom)の異名をとるヌリエル・ルービニ教授が、危機10周年の機に、言論NGO「プロジェクト・シンジケート」に発表した論考(The Making of a 2020 Recession and Financial Crisis)が、改めて注目されている。

 2020年までに金融危機が準備され、その後に世界不況が来る、という暗い近未来を予言する教授は、その根拠となる10の理由を挙げている。かいつまんで紹介しよう。

 (1)財政刺激策の効果で米経済は、潜在成長率(2%)を上回る成長をしているが、これは持続不能。20年までに効果が出尽くし、フィスカル・ドラッグ(財政の下押し効果)が効いて成長率が2%未満に落ちる。

 (2)財政刺激のタイミングが悪かったせいで米経済は過熱、インフレが物価目標を超え、FRBの利上げが進み、長短金利の上昇とドル高が起きる。他の主要経済もインフレ圧力が増し、中銀がFedに追随する。

 (3)トランプ政権が中国、欧州、メキシコ、カナダその他に仕掛けた貿易摩擦がエスカレートし、成長減速とインフレ上昇をもたらす。

 (4)米国の他の政策(サプライチェーンを損なう対内・対外投資及び技術移転への規制、成長持続に必要な移民への規制など)もスタグフレーション(インフレと不況の共存)圧力を加え、Fedの利上げを強いる。

 (5)米国以外の世界の経済も減速し、中国は過剰設備と過大なレバレッジ修正に成長減速が不可避で、ハードランディングもあり得る。脆弱な新興諸国は米国の保護主義と金融引き締め圧力を受け続ける。

 (6)欧州も金融引き締めと貿易摩擦で成長が減速する。加えて、イタリアなどのポピュリスト政策が、公的債務危機を引き起こし、ユーロ圏制度の不備が露呈し、イタリアなどのユーロ離脱を促すかもしれない。

 (7)米国と世界の証券市場は泡立っている(frothy)。米国株のPERは過去平均の5割増し。新興国と一部先進国のレバレッジは明らかに過大。各地で不動産も高騰している。先読みする投資家は20年の景気減速を見越し、19年までにリスク資産価格を見直す。

 (8)いったん調整が起きると、流動性の不足と投げ売りが加速。フラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)も起きる。新興国・先進国の巨額のドル建て債務を抱えた金融セクターは、最後の貸し手としてのFedをあてにできない。

 (9)20年の大統領再選に向け、トランプは対外危機をあおり、イランを標的にしそうだ。イランとの軍事的対決は、スタグフレーション的な地政学危機を引き起こし、世界不況を深刻化させかねない。

 (10)パーフェクト・ストームが襲っても、対応する政策手段は限られている。巨額の債務を抱えた財政に刺激策の余地は限られる。金融政策もバランスシートの制約や利下げの天井が低い。次の金融危機と不況は、前回(リーマン危機)より過酷で長引く。

 それにしても気が滅入る予測だ。リストアップはルービニ教授の得意技だけに、あらゆりリスク要因が網羅されている。18年中に異変が起きるとは見ていないようだが、終末博士の予言の“前倒し”がないとも言い切れない。シートベルトを締め直す時だ。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版

最終更新:11/5(月) 12:34
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