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「がん」犯人はゲノムの中に 岡山大病院、パネル検査で候補薬探す

11/5(月) 11:08配信

山陽新聞デジタル

 何らかの原因で発生した異常な細胞が際限なく増え続ける病が「がん」である。ということは、増殖をコントロールする遺伝子のどこかに傷や狂いが生じているはずだ。

 ならば、遺伝子のセット=ゲノムを調べ、がんを引き起こした“犯人”を捕らえることができるのではないか。かつては夢のものだったがんゲノム医療が今、最新の技術によって実現しようとしている。

 今年2月、全国11の「がんゲノム医療中核病院」の一つに選ばれた岡山大学病院で、がんゲノム医療外来を担当する遠西大輔助教(血液・腫瘍内科)は「ゲノム医療はがんに対する考え方を一変させる」と言う。

 どういうことだろう。例えば、これまでは肺がん、大腸がん、頭頸部(とうけいぶ)がんはそれぞれ別のがんであり、当然治療法も異なるとされてきた。ところが、ゲノムの世界では、三つのがんに共通する「PIK3CA」という遺伝子に異常が見つかる場合があることが分かってきた。

 この遺伝子変異の作用を阻む薬を開発できれば、三つのがんに同時に効く可能性がある。遠西助教は「これからは臓器別ではなく、遺伝子変異によってがん治療を分けるようになっていく」と説明する。

 ゲノムはDNA(デオキシリボ核酸)をつくる四つの塩基を並べたおよそ30億のコード=暗号情報だ。ゲノム外来で行う「がん遺伝子パネル検査」は、この膨大な暗号の羅列から、欠落や順番の逆転、融合などの異常を読み取る。

 実際には、この解析作業は外部機関に委託する。ギガバイト単位のゲノムデータを照合するには、バイオインフォマティクス(生命情報科学)の専門職の力が欠かせない。岡山大学病院と提携する国内、米国の4社と国立がん研究センターの検査機関はそれぞれ専門スタッフを擁し、施設認証を受けている。

 もちろん、丸投げするわけではない。機関ごとに検査できる遺伝子数は数十から数百の幅があり、参照するデータベースや検査に要する時間も違う。ゲノム外来は主治医とともに患者のがん種や病状を検討し、最も適した検査機関を選定する。

 患者が知りたいのは遺伝子変異のリストではなく、治療法があるかどうか。平沢晃教授(臨床遺伝子医療学)は「きちんとがんのゲノム情報を読み解くことで、紹介元の主治医に対し、候補となる治療薬を提示している」と話す。

 岡山大学病院には強みがある。国際水準の臨床試験に取り組む「臨床研究中核病院」の指定も受けており、治験推進部が整備されていることだ。

 治療薬の候補があったとしても、国内で未承認、あるいは患者のがん種が適応外であれば使うことができない。しかし、岡山大学病院なら、そうした場合に医師主導の治験を申請したり、実施中の治験に参加したりする道が開けるかもしれない。

 現在、検査を受けるためには数十万円の費用を負担しなければならない。条件を満たす一部の検査は通常の保険診療との併用が可能な「先進医療」が認められており、国は近い将来の保険適用を視野に入れる。

 岡山大学病院は自施設の患者だけでなく、連携する全国21病院から患者の紹介を受け、リポート作成を請け負う役割を担う。

 検査を通じて集まるゲノムの「ビッグデータ」を今後、どう活用していくのか。バイオインフォマティクスが専門の冨田秀太准教授は「これまで欧米主導でデータベース構築が進んできたが、特に日本人に頻度の高い遺伝子変異もあるはず。データを分析して日本人のがんを標的とした創薬につなげたい」と期待する。

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