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詐術、脅迫、暴力、洗脳 「辞めたくても辞めさせないブラック企業」急増の真相

2018/11/6(火) 8:30配信

ITmedia ビジネスオンライン

 愛媛県松山市で、16歳のご当地アイドルの少女が自殺した事件が、メディアで大きく報じられた。原因は所属事務所の過重な労働環境やパワハラにあるとして、遺族が損害賠償を求めて提訴している。

【画像】自己都合退職についての相談内容。「代わりの人がいないので辞めさせない」という悪質な例も

 遺族側は、少女が事務所に脱退を申し出たら、所属事務所の社長が「次また寝ぼけた事言い出したらマジでブン殴る」というメールを送ったり、「脱退するなら違約金1億円」といわれたと主張している。もし事実なら、辞めたいのに辞めさせてもらえないことが招いた悲劇ということになるだろう。 

 実は彼女だけではない。「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない」という人の相談が増えているのだ。

急増する「自己都合退職時のトラブル」

 厚生労働省が2018年6月27日に発表した、都道府県の労働局による「民事上の個別労働紛争の相談」(2017年度)の中で最も多いのは、パワハラなどの「職場のいじめ・嫌がらせ」の相談が7万2067件。2番目に多いのが、辞めたいといっても辞めさせてくれないといった「自己都合退職」の相談で、3万8945件(相談件数の12.8%)もあった。

 08年度の1万6533件から年々増加、13年度は3万件を超え、16年度には4万0364件に達している。具体的にはどのような相談があるのか。厚労省が公表している事例には次のようなものがある。

 申出人は、正社員として勤務していたが、体調を崩し、有給休暇を取得した上で退職するため、会社の就業規則に従って、上司に退職の意思を伝えたが、「代わりの人がいないので無理です」と言われ、受け入れてもらえなかった。

 ちなみにアイドルが自殺した愛媛県の愛媛労働局が発表した相談件数でも「いじめ・いやがらせ」に次いで「自己都合退職」の相談が第2位となっている(2018年8月31日公表)。相談内容も「事業主に退職を申し出たところ、人手不足を理由に退職を認めず」という事例が紹介されている。

詐術、脅迫、暴力、洗脳 「悪質な手段」を駆使

 人手不足の会社が辞めたい社員を引き留めようとしても、「嫌なら辞めればいいじゃないか」と思う人もいるだろう。今の社会なら、辞める自由はあっても、辞めさせない権利などは存在しない。日本国憲法第22条にも「何人も、公共の福祉に反しないかぎり、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とある。それでも、本人は辞めたいのに、会社が辞めさせてくれないという悩みを抱えている人たちが増えているのだ。

 最近は「退職代行サービス」というビジネスまで生まれ、正社員は5万円、アルバイトは4万円を支払ってでも、退職の依頼をする人が増えているほどである。

 実は筆者は、辞めたいのに辞めさせてくれない実態を解明するために、辞められない相談が増えた13年から14年にかけて、多くの当事者を取材した。明らかになったのは、辞められないのは単純に労働者が法律に無知なせいだけではない。辞めたいという社員に対し、上司や経営者が詐術、脅迫、暴言・暴力、洗脳など、ありとあらゆる悪質な手段を駆使して強引に辞めさせないようにしているからだった。

 悪質な手口を分類すると、以下の5つである。

(1)説得を繰り返すなど洗脳的行為

(2)転職を妨害する(悪口の言いふらし・退職引き延ばし・懲戒解雇)

(3)脅迫的言葉を繰り返し吐く(身代わりの要求・損害賠償の請求)

(4)暴言・暴力を振るって怖がらせる

(5)自宅まで押し掛けるなどのストーカー的行為

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